今日は東京でも竜巻警報が発令されるほどの悪天候でしたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今夜はNHKBSで東大寺二月堂のお水取り史上初の生中継が行われていますね!このすえひろも興奮しながら視聴しております。
生中継 闇と炎の秘儀 お水取り 〜奈良・東大寺修二会〜 - NHK
歌舞伎におけるお水取りといえば二代目松緑による新作舞踊の「達陀(だったん)」が有名です。本物の「達陀」の生中継はこのあと0時半ごろからとのことですので、ご興味お持ちの方はぜひチェックなさってみてください。
さて、先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして第二部を拝見してまいりました!
備忘録として少しばかり感想をしたためたいと思います。
家族の物語としての熊谷陣屋
第二部は、仁左衛門さんの熊谷次郎直実による「熊谷陣屋」と菊五郎さんと時蔵さんの「雪暮夜入谷畦道 直侍」です。今月の狂言立ての中でもっとも時間的ボリュームが大きく、人間国宝による名作が続く本当に贅沢な部であります…どちらもとにかく素晴らしく、このような状況下にあって拝見することができることのありがたさに打ち震えました。。
これまで熊谷陣屋といえば、最後の花道の「16年はひとむかし」が感情のピークのように思っていたのですが、仁左衛門さんの熊谷陣屋では武士を捨てた男としての直実よりも、息子を失った父親としての直実が強調されているように思われ、数々の見どころのなかでも特に首実検の場面が最も胸に迫るように思います。
義経から「敦盛が首に相違ない」と言われたあとの背中、小次郎の首に添えられた手のあたたかさ、そして愛おしむようにそっと抱きしめるような仕草、また孝太郎さんの相模とともに小次郎の首を抱えてきまる三人家族の形が切なくて、胸を締め付けられるようでした。。
古典のマスターピースといえる演目であってもお勤めになる方によって解釈と表現は様々あり、それらすべては代々の役者が人生をかけて練り上げてきたものなのだという、歌舞伎の底知れない魅力を改めて感じました。
そして菊五郎さんの直はんと時蔵さんの三千歳はもう言わずもがなの色っぽさでありました…スッと見逃してしまうようなちょっとしたしぐさから、雪のしんしんとふる夜の江戸の寒さが身に染みるようでした。
先日の11日で東日本大震災から10年を迎えました。信じられない映像の流れるテレビを横目に、散乱した家財道具を必死に片づけていた当時のことを鮮明に思い出します。
しかしながら、節目というのはいったい何なのでしょうね。
私事ながら、肉親を失って10年が経った時、ことさらに「節目」という感覚はなかったように思います。悲しみに波はあれど、いたはずの家族がいないまま自分は生きているというただそれだけの日々が、ひたすらに10年続いただけだった、そんな虚無感を感じたものでした。
3月11日によせて、東日本大震災によって亡くなられた方を悼むとともに、何十万人、何百万人という方々一人一人が途方もない喪失感や、他者からは計り知れぬ困難や後悔や慟哭を抱えて過ごした日々が10年重なった、そしてそれはこれからも続く、その重さを思っています。どうか明日も無事で、安らかな日であるようにと願います。