歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい楼門五三桐 その五 ざっくりとしたあらすじ③

歌舞伎座では第二部出演中の清元清寿太夫さんの新型コロナウイルス感染により、26日・27日の第二部が公演中止となりましたが、出演の方々とスタッフの方々全員の陰性が確認されて28日以降の公演は無事に上演されるそうです。本当に良かったですね…!清寿太夫さんの一日も早い回復を心から祈っております。

さて、ただいま歌舞伎座で上演中の三月大歌舞伎
第三部で上演されている「楼門五三桐」は、有名な大どろぼうの石川五右衛門が登場する歌舞伎らしさあふれる演目です。今月は吉右衛門さんが石川五右衛門をお勤めになっています。

先日、以前にもこちらのブログでお話したものをまとめました。

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少しお話を加えていきたいと思います。何らかのお役に立つことができれば幸いです。

宋蘇卿の因縁

楼門五三桐(さんもんごさんのきり)は、元の外題を「金門五三桐(きんもんごさんのきり)」といって、安永7年(1778)に大坂角の芝居で初演された演目です。繰り返し上演されるうち「楼門五三桐」の外題になりました。

「五三桐」という言葉が外題に使われていることから、秀吉に関係があるらしいなという前情報を得ることができるようになっています。秀吉に関係の深い大どろぼう石川五右衛門の伝説をお芝居としたものです。

南禅寺の山門にたたずむ石川五右衛門がとにかくド派手にカッコよく登場するというのがお楽しみの演目で、通常「楼門(ろうもん)」のところを「楼門(さんもん)」と読ませています。

 

上演時間は15分と非常に短く、詳しい状況説明なしでいきなり始まっていきなり終わるという演目です。歌舞伎らしさが爆発しているのでそれでも十分に楽しめるのですが、内容をつかむとよりおもしろくなるかもしれません。

ざっくりとお話してまいりますので、お役に立てれば幸いです。

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豊国 石川五右衛門・大願久吉 国立国会図書館デジタルコレクション

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②では、南禅寺の三門で絶景を楽しんでいる五右衛門のもとへ、謎の血文字がしたためられた白い小袖の片袖が、鷹によってもたらされたところまでお話いたしました。

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石川五右衛門 豊国 安政大地震絵 国立国会図書館デジタルコレクション

 

この血文字のメッセージは、大明国の十二代神祖皇帝に仕えた男・宋蘇卿(そうそけい)の遺言。そこには五右衛門と真柴久吉への驚くべき因縁が書かれていました。

 

かつて真柴久吉は十二代神祖皇帝が送った使者を、捕虜として捕らえてしまいました。それを恨みに思う皇帝のためにと、宋蘇卿は大明国からはるばる日本に渡りましたが、ついに仇を討つことは叶わず、日本を掌握することもできず久吉によって殺されてしまったのです。

そんな宋蘇卿の遺言によれば、五右衛門こそが自分の遺児であるというのであります。

 

一方の五右衛門もまた、真柴久吉に対し深い恨みを持っています。五右衛門を幼少の頃より庇護してきたのは、久吉から滅ぼされた武智光秀であったためです。

亡き父、恩人光秀の無念はすべて真柴久吉にあることを知った五右衛門。この因縁を知ったからには、真柴久吉を討って二人の恨みを晴らしてやるぞと決意するのでした。

 

なお、宋蘇卿は宋素卿という実在の貿易家がモデルですが、石川五右衛門の父というのは完全なるフィクションであります。宋素卿の人生もまたドラマのように波乱万丈なようで、お芝居の登場人物のモデルにしたくなる気持ちもよくわかります。

 

と、そんな折、南禅寺の三門へ、突如何者かが現れたようです。

一体誰だろうかというところで次回に続きます。

公演の詳細

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