歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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三月をふりかえり… 2021年

早いもので今月も今日でおわり…今月も芝居の楽しいひと月でした。

吉右衛門さんのご様子ですが、小康状態が続いており直ちに危険な状況ではないとの情報が加わり、安堵しております。どうかこのまま回復なさいますように…

www.sponichi.co.jp

 

今月は幸運にも、第二部を前方で拝見することができました。

そんな中で忘れられないのが、「熊谷陣屋」で相模が小次郎の首を抱えて嘆き悲しんでいる場面で、平然と表情を変えない仁左衛門さんの直実のほほを涙がつたっていたことです。あからさまな演技というような様子ではなくてごく自然な、かといって汗とも違うきらりと光るもので、熊谷のつらさがリアリティを持って胸に迫りました。

「熊谷陣屋」を見るたびに、義経ってなんてことをさせるんだと思ってしまうのですが、義経にねぎらわれただけで長身の体を小さく縮めるようにしてまでありがたそうに恐れ入っている仁左衛門さんの熊谷の姿を見て、熊谷という人物の本質が見えたように思いました。

仁左衛門さんの熊谷は、相模に対し「やい女」と言うところを「こりゃ女房」と言う点も好きです…。この一言でその後の物語の感じ方が相当に変わり、首を相模に直接手渡す型が生きるのだなあと思います。

 

そして以前もブログでお話しましたけれども、直侍の蕎麦屋の場面で「隣の人と盃を酌み交わすことはお断り」というような内容が書かれている貼り紙が見えたのが思い出深いです。コロナ対策の洒落なのだろうと思われますが、本編で特に触れることもなくそっと貼られているのがカッコいいなと思い、しびれました。

もしかしたらほかの演目にもそっと忍ばせてあるのかもしれませんね…!大道具の隅々まで注意深く見なければと思いました。

 

 

さて、来月はどんな芝居が待っているのでしょうか。

このすえひろは、とにかく「桜姫東文章」が待ち遠しくてなりません。

それを楽しみに今日は休みたいと思います。おやすみなさいませ。

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