歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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本日千穐楽 歌舞伎座 六月大歌舞伎 2021年6月

本日28日は歌舞伎座で上演されていた六月大歌舞伎の千穐楽でした!おめでとうございます!

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歌舞伎座でスタンディングオベーション

このすえひろも今日は歌舞伎座へ出かけまして、桜姫東文章の下の巻の千穐楽を噛みしめてまいりました!過ぎ行く一分一秒が大切で、このまま時間が止まってほしいと何度も思いつつも、幕切れにはなんともいえない安堵感と感謝の念で感極まり、涙いたしました。。

幕が閉じても鳴りやまぬ拍手に二度のカーテンコールがありました。拍手に包まれて舞台の中央に並ぶ仁左衛門さんと玉三郎さんのお姿、とにかく感動的な情景でした。目にはっきりと焼き付いています。

二度目は一階の一部でスタンディングオベーションも起こり、このすえひろも後方にいたこともあって気が付いたときには立ち上がっていました。歌舞伎座でスタンディングオベーションをしたのは初めての体験だと思います。スタンディングオベーションというのはよし立つぞ、と思ってするものだと思っていましたが、知らない間に立っていました。あまりの気持ちの高ぶりに立たざるを得なかったと申しますか。

 

夢にまで見た舞台をこの目で見ることが叶ったこと、この上ない喜びでした。先日最終回が放送されたドラマ「コントが始まる」の登場人物・中浜さんの言葉を借り、「大学の授業の桜姫東文章のビデオで孝玉と出会えたことはとても幸運なことだったし、歌舞伎のファンを選択できた人生で良かった。本当に良かった。」と心の底から思っています。

仁左衛門さんと玉三郎さんはもちろん、今回の上の巻・下の巻の上演を実現してくださった全ての方々、T&T応援団の方々に心から感謝しております。この場を借りてお礼を述べたいと思います。本当にありがとうございました。

 

仁左衛門さんと玉三郎さんであればこそ感じられたことですが、下の巻まで拝見してつくづく、「桜姫東文章」という芝居そのものがなんとおもしろいのだろうと思いました!!筋立てはとにかく奇妙奇天烈でありながらも、人間の持つ醜悪な魅力をまざまざと突きつけられたようでした。

最後、権助を殺す桜姫の一瞬の表情のなかにためらいのようなものを見て、肉親と操を奪われた憎しみなのか、この人に恋した後悔なのか、それともまだ残る恋心なのか、とにかく因果なものを感じ、それでも立ち上がる強さに胸打たれました。嶽本野ばらさんの著作にあったように乙女はいつも一人で冒険に出るのですね。

 

女の子の奇天烈な冒険譚という意味では不思議の国のアリスのようだと最初は感じましたが、内容を噛みしめるごとに、映画「ローズインタイドランド」や漫画「少女椿」などの、さらにグロテスクでエロティックでダークな世界が連想されました。こういった世界がエンタメのど真ん中にあったということ自体が強烈で、江戸時代のエンタメ界の豊かさにも感じ入りました。

 

また今月は複数回拝見したのですが、23日に拝見した時だけ穴掘りの時の権助の衣装が違っていたのが気になりました。

奉納 一心講などの文字が描かれた布のつぎはぎであったのが、この日は銀杏の柄になっていたのです。

松嶋屋ゆかりの銀杏と思われ、確かなことは全くわかりませんが、察するに秀太郎さんの月命日であったからではないかと思われました。

ひと月が経ったのですね。秀太郎さんのお姿が偲ばれます。

 

このご時世では、目の前にある芝居の大切さ、大好きな役者さんがお元気でいてくださることのありがたみが身に沁みます。今後も大切に大切に拝見してまいります。

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