歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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本日千穐楽!歌舞伎座 九月大歌舞伎 2021年9月

本日27日は歌舞伎座で上演されていた九月大歌舞伎の千穐楽でしたね!おめでとうございます!

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至高のカーテンコール

今日はこのすえひろも歌舞伎座で第三部「東海道四谷怪談」の千穐楽を拝見することができました。前回の上演の際は産まれておらず、仁左衛門さんと玉三郎さんの四谷怪談を肉眼で見ることができるとは夢にも思っていなかったので、生きていると思いがけない幸せがあるんだなとつくづく思いました。このような機会に劇場へ出かけることが叶い、本当にありがたいことです。

 

今回の上演は伊右衛門がケレン味のある仕掛けの中で懲らしめられる場面がないまま終わってしまうこともあってか、劇場で拝見するたびにどんどん玉三郎さんのお岩さんに深く深く感情移入してしまいました…。本当に考えさせられました。

娘、母親、武士の妻、女、当時を生きる女性としてのすべての尊厳が踏みにじられた結果、ねずみの化身となって我が子をも喰らい(と解釈しているのですが違うかもしれません)、周囲の人物を呪いつくすという壮絶な感情の渦にやられ、誰の人生もお岩と薄い膜一枚隔てた場所にあるような気がしてきて、一体私は今後どう歩んでいけばいいのか、女性の生き方とは……など普段考えないようなことを考えてしまい、胸がずっしりと重くなっていきました。

そんななか、隠亡堀での伊右衛門の「誰だ、俺を呼ぶのは誰だ」が一番怨霊感を感じさせられておそろしいなと思いました。振り返るとあの部分だけがホラー的な怖さだったなと思います。玉三郎さんのお岩さんは決してエンタメ感のあるお化けではなく、まぎれもなく自分と同じ人間でした。とにかくそれが恐ろしかったです。もちろんそのリアリティは仁左衛門さんの伊右衛門あってのものだったのだと思います。壮絶なドラマでした。

 

そして今日の終演後には歌舞伎では珍しいカーテンコールが2度もあり、一階席ではこちらも珍しいスタンディングオベーションが発生しました。

しかしお顔を上げるタイミングが合わなかったのか、舞台上に若干のもたつきがあり、並んだ仁左衛門さんと玉三郎さんがあれ?というようにお互いに顔を見合わせてなにかお話され、笑顔を浮かべられるという至高のアクシデントがありました。最高です。

二度目のカーテンコールでも降りてきた緞帳が途中で止まり、ん?というようなやりとりがあり、爆発しそうでした。これにより四谷怪談の全ての悲しみが一瞬にして吹き飛び、このひと月で重くなっていた気持ちが嘘のように軽くなりました。救われました…拝みたいほど尊かったです…ありがとうございました…

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