歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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歌舞伎座 吉例顔見世大歌舞伎 第一部 神の鳥・井伊大老を見てきました!

テレビなどでは早くもこの一年を総括するムードが漂いはじめていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

このすえひろはといえば、今月から始まった菊之助さんご出演の連続テレビ小説「カムカムエブリバディ」にハマっております。映像のつくりと役者さんたちの繊細な演技が素晴らしくて、既に何度か泣いてしまいました…。

菊之助さんは今のところ映画や看板の中でのご出演ですが、今後主人公たちの世界にも登場するのでしょうか。いかにも銀幕スターというカッコよさに惚れ惚れしています。楽しみですね!

 

また、大河ドラマ「青天を衝け」にもいよいよ芝翫さん演じる岩崎弥太郎が登場していますね!毎回とても楽しく拝見しています。岩崎弥太郎の底知れなさがなんだか恐ろしくって、今後栄一の身に何が起こるかワクワクしております。残りの放送回数が少なく名残り惜しい限りです。最後まで大切に拝見したいと思います!

 

さて、先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして吉例顔見世大歌舞伎の第一部を拝見してまいりました!備忘録として少しばかり感想をしたためたいと思います。

井伊大老に涙…

第一部は「神の鳥(こうのとり)」と「井伊大老」という狂言立てです。

神の鳥(こうのとり)」は兵庫県豊岡市に現存する芝居小屋・出石永楽館にて、2014年に初演された出石神社を舞台とした舞踊劇。歌舞伎座版としての上演だそうです。

こうのとりの夫婦が人間に姿を変えて囚われの我が子を助けようとするのだが、天下を揺るがす悪の権力者がこれを許さず困ってしまうところ、待て待て待てーと超人的ヒーローが駆け付け、万事解決めでたしめでたし…という大変歌舞伎らしい内容でした。

 

こうのとりの夫と超人的ヒーローが愛之助さん、こうのとりの妻が壱太郎さん、傾城が吉弥さん、入道が種之介さんという配役です。そしてなんと東蔵さんが天下を揺るがす悪者をお勤めでした。これは珍しいですよね!新鮮で興奮しました。

わかりやすくファンタジックな設定、ぶっかえりや早替わりなどの華やかな演出、加えて隈取のヒーローまで登場するとあって、幅広い世代の方が楽しめる演目だなあと思います。これから初めての歌舞伎をご覧になる方にもおすすめです。

 

続く「井伊大老」は、大老となった井伊直弼が桜田門外の変の前夜、側室のお静の方の元を訪ね、心を通わせて静かな時を過ごすという昭和の名作。今回は少し短い上演だったと思いますが、非常に濃密な時間でした。素晴らしかったです…。

井伊直弼が白鸚さん、お静の方が魁春さん、仙英禅師が歌六さんという配役でした。特に魁春さんのお静の方がとても可愛らしくて、学ぶところがたくさんありました。あんな女性になりたいです。

うまく言葉にできませんが、切ないひとときでした。少しずつ落ちていく照明と、窓の外にわずかに見える風や雪によって、時が移ろうさまが丁寧に描写されていて。時が移ろうということはすなわち二人のしあわせな時間が間もなく失われてしまうということが、観客にだけはわかっているという。そんななか白鸚さんと直弼と魁春さんのお静の方がごく自然に見えたものですから、より一層切なさが胸に沁みました。素晴らしい一幕でした。

 

そういえば、大河ドラマ「青天を衝け」にも井伊直助が登場しましたね。岸谷五朗さんがお勤めでした。ちゃかぽんとあだ名され、周囲から突き上げられるようにして運命に翻弄された小心者の井伊直弼が、桜田門外で命を落とす姿は切なかったです。

井伊直弼の人物描写が新鮮だと評判になっていたようですが、そう思われた多くの方にぜひ歌舞伎座の「井伊大老」もご覧いただきたいなあと思った次第です。様々なフィクションに触れると、自分の中に視点が増えていくようで豊かな気持ちになりますね。

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