歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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二月をふりかえり… 2022年

早いもので二月も今日でおわり…今月はロシアのウクライナ侵攻によってにわかに世界がざわめいて、毎日不安なニュースが飛び交っていますね。やりきれなさに胸が締め付けられるようです。いま恐ろしい思いをされている方に、どうか一日も早く穏やかな日が戻ることを心から祈っています。どうか一人でも多くの方の命が守られますように。

天皇にはいずくにおはす

今月は仁左衛門さんの一世一代の「義経千本桜 渡海屋・大物浦」を拝見するために全力投球していて、1分1秒目を凝らして大切に拝見しようとしてガチガチに意気込んでおりました。歌舞伎座へ出かけない日にも、今日は無事に上演があるか、お怪我はないかと心配して張り詰めていたので、今はなんだか腑抜けになってしまったように過ごしております。

命が燃えている瞬間をこの目で見るようでした。「天皇にはいずくにおはす」という切なる発声が、鮮明に耳に残っています。大好きな役者さんと自分が同じ時代を生き、芸の集大成と自分の熱量が合致するタイミングで劇場にて同じひと時を過ごせたということは、もう奇跡としか言いようのないありがたいことだと思います。

もう拝見できないと思うとたまりません。素晴らしい舞台を見せてくださったこと、心から感謝申し上げます。

 

そういえば、二度目に拝見した時だったと思うのですが、吉右衛門さんの知盛の記憶の残像が、一瞬ありありと頭に浮かんだのでした。お二人の知盛は全くもって違う味わいであるにも関わらず、吉右衛門さんが鮮明に映っている半透明のフィルムのようなものが仁左衛門さんの姿に重なってサッと見えたような感覚で、たまらなく懐かしいような、心が湧き上がって興奮するような、とても不思議な体験でした。

今月をもって仁左衛門さんの知盛も、もう見ることの叶わない舞台となってしまったわけですが、こうして自分の頭の中には記憶が刻まれていて、ふとした瞬間に鮮明に湧き上がってくることがあるんだとわかり、とても嬉しくなりました。素晴らしい芸というのは、実は観客の頭の中にも蓄積されているんですね。感謝の思いでいっぱいになります。

 

感染状況等により1度も拝見できずに終わってしまう可能性も想定していたので、無事に全日程で配役も変わることなくご本人のお望みが叶ったことを、ファンの端くれとしても心から安堵ししあわせに思いました。

しかし、白鸚さんが53年間お勤めになられた最後の「ラマンチャの男」が中止となってしまったのは無念でならず、ファンの方はもちろんのことご本人の無念を思うともう言葉もなく、とにかくやりきれない思いです。また千穐楽目前であった「天日坊」も中止となってしまい、どんなにご無念であろうと思います。

この不安定な状況はいつまで続くのでしょうね…。一日も早く、と何度申したかわかりませんが、ただ状況の改善を祈るばかりです。

 

それはそうと、「カムカムエブリバディ」が菊之助さんに夢中にならざるを得ない方向にまい進していますね…!毎朝たまらないです…。初代&二代目のダブルモモケンが、まったく違う人物になっていたことに興奮しました。ご本人の思い入れも深そうな役どころ、最後まで心して拝見します。

また「鎌倉殿」にもいよいよわれらが判官殿こと源義経が登場しましたね!衝撃的な人物像でした…!今後が楽しみでなりません。

 

さて、来月はどんな芝居が待っているのでしょうか。

楽しみに今夜は休みたいと思います。お休みなさいませ。

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