昨日は福島県沖を震源とした最大震度6強の大きな地震がありましたね。被害に遭われた方には心よりお見舞い申し上げます。
東京でも大きく長い揺れを感じ、大変恐ろしかったです。加えて大規模な停電が起こり、このすえひろの住む地域でも部分的に停電が起きていたようです。幸い我が家では停電は免れましたが、エレベーターが停まるなどの影響がありました。今後も引き続き警戒する必要があるそうですので、お互いに気を付けてまいりましょう。
歌舞伎座は災害時、3000人収容できる巨大防止防災施設に変身するといわれています。もし歌舞伎座や周辺で災害に遭われた際は、無理に帰ろうとせずに留まるのがよさそうです。いつ何が起こるかわかりませんので、どうぞ記憶の片隅に置かれてください。
話は変わりますが、ただいま歌舞伎座では三月大歌舞伎が上演中です。
第三部で上演されている「天衣紛上野初花 河内山」は、幕末から明治期に活躍した名作者・河竹黙阿弥の人気演目として知られています。河竹黙阿弥の作品といえば七五調のセリフが特徴です。今月は主人公の河内山を仁左衛門さんがお勤めになっています。
この演目についてはこれまでもこのブログでお話いたしましたが、内容などについて少しばかりお話を追加していきたいと思います。芝居見物やテレビ放送、配信などの際、何らかのお役に立つことができればうれしく思います。
過去のお話は最下部にまとめのリンクを張り付けておきます。よろしければご一読ください。
ざっくりとしたあらすじ①
河内山(こうちやま)は、明治7年初演の作を前身とし1881(明治14)年3月に東京の新富座で初演された芝居「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)」 のうち、河内山宗俊を主人公とする名場面を称します。
「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)」にはもう一人・直侍(なおざむらい)という男を主人公とする場面もあります。こちらは風情ある恋の名場面です。素敵ですので上演の際にはぜひにとおすすめいたします。
河内山宗俊は文政のころに職権を乱用した悪事を重ねて捕まった江戸城の坊主衆・河内山宗春がモデル。江戸の犯罪者たちは、芝居や講談、錦絵などの人気キャラとなり、人々の楽しみに一躍買っていたようです。「河内山」は河竹黙阿弥が手掛けた明治に入ってからの演目ですが、そういった江戸風情を描き出している最後期の作品のひとつです。
河内山新狂言松江侯屋舗之場 九代目團十郎
国立国会図書館デジタルコレクション
ざっくりとした内容としてはこのようなものです。
①お数寄屋坊主の河内山は、質屋の上州屋で、松江家に奉公している娘のお藤がトラブルに巻き込まれていると聞かされ、トラブル処理を二百両で引き受ける
②松江家では考えが浅くすぐにキレる主人の松江出雲守のために、お藤はじめみんなが困り果ててている
③そこへ、高僧のフリをした河内山が潜入してきて、松江出雲守を説得しながら追いつめ、お藤を上州屋に返すと約束させる
④帰り際、松江家の内部の人間にお数寄屋坊主の河内山だと正体がバレてしまう
⑤しかし河内山は開き直って一喝、悠々と去っていく
河内山のお数寄屋坊主という立場を生かしただましの手口がおもしろいところなのですが、現代ではなじみの薄い職業かと思います。
次回より詳しい内容について、順を追ってお話してまいります。
参考文献:新版歌舞伎事典/歌舞伎手帖 渡辺保/歌舞伎 加賀山直三/歌舞伎の名セリフ 藤田洋/歌舞伎入門事典 和角仁・樋口和宏