ただいま歌舞伎座で上演中の四月大歌舞伎!
第二部で上演されている「義経千本桜 時鳥花有里」は、義太夫狂言の三大名作として知られる義経千本桜のなかの所作事(舞踊)。義経千本桜は義経が題名に入っているのに義経が主人公でない場面が多いのですが、この所作事は珍しく義経が主役です。
「時鳥花有里」は近年新しく構成されたもので義経千本桜の本筋を全く知らずとも楽しめる内容ですけれども、義経千本桜は名作ゆえぜひ全貌をご紹介したいと思いました。
以前こちらのブログで簡単にお話したものがございますので、ご紹介しながらまとめてみます。今後の芝居見物や配信など、何らかのお役に立つことができれば幸いです。
義経千本桜とは
義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)は、「壇ノ浦で義経に滅ぼされた平家のさむらい達が実は生きていて、兄頼朝に追われる身となった義経への復讐を誓う(が、叶わない)」という内容を、壮大な悲劇、親子の情愛などなど様々なテイストの名場面で描いていく演目です。
ひとつの物語であるのに主人公といえる存在が3人いて、それぞれ武士・庶民・動物と身分が全く異なり、場面ごとに味わいがガラリと変わるところも大きな魅力です。それゆえ、歌舞伎役者の方々にとっては至難とされています。
全体の流れ
まずは義経千本桜の全体の流れをご紹介します。
本来、義経千本桜の所作事といえば、上の回でお話している「川連法眼館」につながる「道行初音旅」が一般的です。が、あくまでもそれは近現代のお話であって、「道行初音旅」にまとまるまでは様々な構成パターンの舞踊が作られ上演されていたようです。
そんな古い台本をもとにして、源義経が吉野山へと落ち延びていく場面を所作事にしたものが「時鳥花有里」で、2016年6月に上演されました。
歌舞伎や浄瑠璃における義経はとにかく「悲劇の貴公子」として描かれます。御曹司として生まれながら父義朝を討たれ、兄頼朝の挙兵に加わって平家を滅ぼしたにも関わらず、兄頼朝から疎まれ都落ちを余儀なくされた…という、悲しみを背負っている存在、いわゆる判官びいきの象徴です。それを念頭にご覧になるとよりわかりやすくなるのではないかと思います。
道行とは
歌舞伎舞踊のジャンルの「道行」とは何かということについてお話したのがこちらの回です。