歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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シネマ歌舞伎桜姫東文章 下の巻を見てきました!

東京ではなんだかこのまま梅雨に突入してしまうのかなという陽気ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

どうやらこのまま梅雨とはいきませんで、ふたたび暑くなるそうです。体調を崩しやすくなりますので、みなさま何卒ご自愛くださいませ。

それはさておき、先日東銀座の東劇へ出かけまして、現在上演中のシネマ歌舞伎「桜姫東文章 下の巻」を拝見してまいりました!上の巻の色っぽさもたまりませんでしたが、芝居そのものが持つうねりの妙はやはり下の巻なのだなあと、南北の力に圧倒されました。備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。

インタビューの言葉に感動

シネマ歌舞伎「桜姫東文章 下の巻」は、昨年2021年6月に歌舞伎座で上演されて大きな話題を呼んだ舞台のシネマ歌舞伎版です。かつて孝夫時代の仁左衛門さんと玉三郎さんが「孝玉コンビ」としてお勤めになり、社会現象をも巻き起こした伝説的な演目を、実に36年ぶりにお勤めになったという奇跡の舞台でした。

コロナ禍という状況もあり、通し狂言であるところを「上の巻」「下の巻」と分け、月をまたいで上演されました。そのため、シネマ歌舞伎も「上の巻」「下の巻」に分かれていて、「上の巻」に続いて「下の巻」が公開されたという運びです。

 

孝玉コンビによる桜姫東文章は、その熱狂ぶりから歌舞伎ファンの間で長らく伝説化していた舞台です。1970年代後半の劇場に自然発生した歌舞伎ファンの方々による私設の応援団の活動に端を発するもので、熱狂そのものだったようです。詳しくは下のお話にまとめています。

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SNSはおろかインターネットも普及していない時代、メディアの広報活動に関わらず人々の間でこういった現象が起こったというのは、演劇史やエンタメ史に残る出来事ではないかと思います。その熱狂の核心にあったお二人の舞台が36年の時を経て再び上演されたのですから、まさに奇跡としか言いようのない出来事でした。

 

そんな待望の上演ではありましたが、コロナ禍ということもあり、さまざまな事情からご覧になれない方が全国に大勢いらしたものと思います。舞台記録映像だけではなく、インタビュー付きのドラマチックな編集でシネマ歌舞伎として残されたことは、本当に喜ばしいことですね。

このすえひろも今回下の巻を拝見して、生の舞台ではできなかった発見を得たり、ハッとするようなカットの美しさに圧倒されました。映像であるからこそのおもしろさもあるんだなあと、シネマ歌舞伎の魅力を再確認した次第です。

 

上の巻で下の巻で描かれるのは、落ちぶれた桜姫が権助の女房になり、女郎にまで身を落としてしまうが、事の真相を知って自ら権助を手にかけ、元の吉田の息女へ戻るという大変パワフルな内容です。

玉三郎さんの風鈴お姫の吹っ切れたような爽快感たるや。対する仁左衛門さんの権助も、上の巻のようすが嘘のようにカッコ悪くなっていき、夢から醒めたような思いがしてくるのも芸の技であるなあと感じ入りました。やさぐれていた桜姫がふと吉田の息女として我に返る、その瞬間が切なかったです。

 

つい上の巻の美しさに心奪われてしまうけれども、戯曲全体のおもしろみは、この後半部分にこそ凝縮されているのだなあと唸らされました。人生の怒涛に身を任せて次々に生まれ変わっていく桜姫の姿は、妙に元気づけられるといいますか、気にせずぐいぐい生きてやろうという気持ちになります!

シネマ歌舞伎ということで早替わりのシーンもスピーディーに編集されていて、仁左衛門さんの早替わりの頻繁さにハラハラしました。休演の発表があった直後でしたので、体のご負担への心配の思いが募ります。この機会にどうそゆっくりご静養いただき、またお健やかなご様子を拝見したいです。

 

「桜姫東文章」は鶴屋南北が江戸時代の名女形・五代目岩井半四郎のために書いた作品で、浮世絵などを通じて五代目岩井半四郎に魅入られていた私にとっては、玉三郎さんの桜姫を通じて半四郎の姿をいきいきと想像する喜びも大きかったです。

そんなこともあり、仁左衛門さんがインタビュー部分で発された言葉で目からうろこが落ちるような思いがして、玉三郎さんと同じ時代を生きることができることの幸運さに胸が震えて涙が出ました。上映中の映画ゆえ、この言葉を書くわけにまいりませんので、ご興味をお持ちの方はぜひご覧になってくださいませ。

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