ただいま歌舞伎座では秀山祭九月大歌舞伎が上演中です。
初代吉右衛門の芸を顕彰するため、昨年亡くなられた吉右衛門さんを中心に毎年九月に上演されていた「秀山祭」。古典の名作演目が並ぶ楽しみな公演です。今回は二世中村吉右衛門一周忌追善と冠し、吉右衛門さんの追善公演として上演されています。
第一部で上演されている「菅原伝授手習鑑 寺子屋」は、数ある歌舞伎演目の中でも名作中の名作として知られています。上演頻度の高さがけた違いで、こちらのブログでも過去にお話ししたものがございます。古くて稚拙なものも含まれますが、何らかのお役に立つことができれば幸いです。
寺子屋とは
寺子屋は菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)という長い物語の四段目にあたる場面。文字通り、江戸時代の学び舎である寺子屋を舞台として起こる悲劇です。「四段目の大当たりは大坂中はもちろん諸国の浦々山家の隅々までも響き渡る大評判」と評されるほどの名場面として長らく愛され、現代人の涙をも誘います。
そもそも菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)は、菅原道真の大宰府左遷を題材とした演目。1746(延享3)年に大坂の竹本座にて人形浄瑠璃として初演され、三大狂言の一つとして数えられる名作として現在に残っています。
ざっくりとしたあらすじ
物語のあらすじについて、ざっくりとですがお話したのがこちらの回です。
ざっくりとは言いながら①~⑥と長いのですけれども、何卒ご容赦ください。「寺子屋」の場面は独立して上演されることが多いですが、実は「寺子屋」の場面に至るまでの人間関係が重要でもあります。お読みいただきますと物語がよりわかりやすくなるかと思います。
松王丸の姿が伝えるメッセージ
松王丸の苦しい胸の内や思惑は、髪型や衣裳も伝えています。
舞台の上があらゆるお約束で彩られているところも歌舞伎ならではのおもしろさのひとつかと思います!
涎くりはいくつまで寺子屋に?
悲しい物語のなかで唯一ほっこりと笑わせてくれる人物が、寺子のなかでもとりわけ大きい涎くりです。この涎くりはいつまで寺子屋に通っていて良いのだろうか…?と疑問に思い、江戸時代の寺子屋のシステムについて調べてみたのがこちらの回です。
今回は又五郎さんがお勤めになっています。大変豪華で必見です!
現代に続く偉業
まもなく歌舞伎界に團十郎の名跡が復活しますが、寺子屋において重要な役割を果たした團十郎がいました。この方がいなければ寺子屋の味わいは全く異なるものであったかもしれず、なにやら感謝の念すら湧いてきます…!
武部源蔵にはモデルが!
主人公の松王丸は架空の人物ですが、寺子屋の主・武部源蔵にはなんとモデルがいたそうです。江戸時代の人々の知性が感じられる、絶妙な人選であります。ややマニアックな話になりますがご興味あらばお読みいただければと思います。