早いもので2022年も今日でおわり…
今年は團十郎襲名という歌舞伎界最大のイベントが執り行われ、このすえひろも何ともいえずワクワクと心躍る一年でありました!「襲名披露興行の幕が開く」というだけで、なにやら常にそのことに心を配ってしまう自分がいて、日々気持ちがソワソワと忙しくなり、月日が飛ぶように過ぎ去っていきます。襲名の年はいつもこうです。
とはいえ、團十郎の名跡はやはり格別のものがありますね。浮世絵に代々の姿を見たり、それぞれの逸話を調べたりする中で、江戸市民がこよなく愛し神格化してきた存在のスケール感が、イメージの中でどんどん膨らんでいました。
代々の團十郎のうち、私が肉眼で拝見したのはお二人です。大好きな十二代目の思い出は数々ありますが、それでも私がこの先長く拝見していくであろう團十郎は、この方なんだなあと思うと、舞台の上で光輝く十三代になんともいえぬ愛着を抱きました。
憧れの江戸時代人に一つ近づいたような思いと申しますか。十三代が十四代に名跡を譲り渡す時まで、どうか自分も心身ともに健康で芝居見物を続けていられますようにと願い、努力精進を誓った次第です。
\待ってました!/
今年も歌舞伎界にいろいろなニュースがありましたが、なかでも特にうれしかったのは、團十郎襲名興行から歌舞伎座に大向うの声が戻ってきたことです!今はまだ関係者の方お二人のみの声掛けではありますが、お声があるだけで劇場空間がぐっと華やいで、ハレの場の空気が広がるように思います。
やはり大向うの声があるのとないのでは、歌舞伎を見ているという実感の度合いが段違いなんだなと実感いたしました。舞台の上の役者さんに大向こうの声が投げかけられると、舞台、花道、客席が一体化するような効果を感じます。他の西洋式演劇とは違う、歌舞伎独特の演劇空間を成り立たせるために欠かせないものなのでしょう。
さまざまな文化が淘汰されていく中で、伝統の一つとして守り残されてきたものにはそれだけの大切な意味があるのだなと、人々の思いによって培われる劇場文化の奥深さを見るようでした。この度の疫病を受けても大向うの文化が消えずに残ったことに感謝の念で一杯です。今後も末永く続いていきますように。
襲名披露の感想についてはこれまでのブログでしつこくしつこくお話してまいりましたのでここでは割愛いたしますけれども、襲名披露以外の芝居で振り返りますと二月に上演された仁左衛門さんの一世一代の知盛、四月に上演された仁左衛門さん玉三郎さんのご共演での「ぢいさんばあさん」、吉右衛門さん追善の秀山祭での菊之助さんの「藤戸」などが、今も深く心に残っています。いずれも素晴らしい時間でした…。
仁左衛門さんは初夏に帯状疱疹で休演なさり、奈良の薬師寺に行って絵馬を書いてくるほど心配いたしました。。無事にご復帰なさり、その後もお元気そうなごようす、本当に安心いたしました。そのおかげで久方ぶりに夏の大阪松竹座へ旅することもでき、551蓬莱の肉まんや、りくろーおじさんのチーズケーキ、一芳亭の黄色いしゅうまいなどなどを堪能。楽しい思い出がいっぱいです。
今年はこれまで以上に歌舞伎界の世代交代を実感する一年で、寂しさが拭えませんでしたが、今後への期待も高まりました。歌舞伎役者の方々がそれぞれの先達から受け継いだ名跡を背負うさま、今後十年、数十年の年月、それぞれのスピードで芸を深めていかれるさまを、客席よりつぶさに拝見しながら共に歳を重ねていけるというのはとても幸せなことだと思います。
嘆こうと思えばどこまでも嘆くことができますが、それはおそらくいつの時代もそうなのだろうと思いますから、長く歌舞伎を愛せるよういつも先に楽しみを見つけられるような心持でありたいです。ありたい、というだけで、できるかは自分次第ですが。
ブログをお読みいただいた皆様には、本年中も大変お世話になりました。来年で歌舞伎座は新開場より10年。このブログも来年で10年となります。引き続き運営してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。
歌舞伎座の風景もだいぶ以前の姿にもどりつつありますが、新型コロナウイルスの影響は未だ続いていますね。さまざまな事情により劇場へお出かけになれない方も大勢おいでのことと思います。微力ながら、少しでも芝居の気分をお届けできれば幸いです。
また個人的には、NHKの脚本コンクールで最終審査に選出していただくことができました。来年こそは結果を出し、良いご報告ができるよう、精一杯努力精進してまいります。
さて、来年はどんな芝居が待っているのでしょうか。とりわけ寒いこの年末年始、くれぐれもご自愛くださいませ。良いお年をお迎えください!