今日は1月4日、本日より仕事始めという方も多いかと思います。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
このすえひろはといえば、久しぶりにじっくりと墨を摺って、書初めをしておりました。今年は日々のすべて、目にする舞台のすべてに新鮮な心で向き合えるよう禅語の「万物生光輝」を書いてみました。
思い付きで始めた自己流の下手な書道なのですが、文字というものが大変好きですので細々と楽しんでいます。いつか機会があれば、歌舞伎の文字・勘亭流の書き方を体験してみたいところです。
さて、先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして壽 初春大歌舞伎 第一部を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためたいと思います。
「知らざあ言って聞かせやしょう」
初芝居の歌舞伎座も新年の朝日に照り映え光輝を生じていました。今年もお世話になります。
第一部は「卯春歌舞伎草紙」「弁天娘女男白浪」という狂言立てです。
「卯春歌舞伎草紙」は、かぶき踊りで評判を呼んだ出雲阿国の一座が、京から故郷の出雲へ凱旋するという趣向の華やかな舞踊です。出雲阿国は七之助さん、阿国の恋人だったという名古屋山三は猿之助さん。そのほか勘九郎さん、愛之助さんはじめたくさんの方々がぞろぞろと登場、めくるめく世界が展開。今月も寿猿さんが軽やかな引っ込みを披露されていて、客席から手拍子が起こっていました。
このすえひろは近ごろ注目している鷹之資さんに釘付けで、来月行われる富十郎さん十三回忌追善の船弁慶を思い描いて心が踊りました。大勢の方々との踊りのなかでは、自然と鷹之資さんに目が奪われてしまいます。お父様ゆずりのお声も大好きで、将来のご活躍が楽しみでたまらない方のひとりです。
続く「弁天娘女男白浪」は、言わずと知れた河竹黙阿弥の名作。今年で没後130年だそうで、今月の歌舞伎座ではすべての部で黙阿弥作品が上演されています。そうでなくても上演頻度の高い黙阿弥作品。セリフの美しさや狂言そのもののおもしろさはもとより、人物造形のおもしろさに毎度毎度唸らされます。
今回は愛之助さんの弁天小僧、勘九郎さんの南郷力丸、芝翫さんの日本駄右衛門という配役でした。愛之助さんの弁天に勘九郎さんの南郷というのは、近年の歌舞伎座ではなかなかレアな取り合わせではないかと思います。お馴染みの音羽屋のテンポ感とは違うことでむしろ芝居そのものの実録感が際立って見えてくる、おもしろい体験でした。
特に愛之助さんの弁天小僧は初めて拝見しまして、お嬢さまと盗賊のギャップの大きさがすごく、大変新鮮に味わいました。ムキムキでとても強そうでしたね。セリフも朗々としていました。愛之助さんは先月の顔見世で上演された封印切の八右衛門でも非常に良い舞台をお勤めになっていたので、今年はこうした古典でのご活躍が続いていくと本当にうれしいです。
勘九郎さんの南郷は正体を顕してからよりも、その前のさむらい風の方を魅力的に感じました。番頭がお嬢様の贔屓の役者を聞く時のお決まりのやり取りで、勘九郎さんの南郷が「あのような真面目な役者は大嫌い」とおっしゃって笑いが起こっていましたが、その真面目さが出ているのだろうなあと思いました。勘九郎さんの弁天も近いうち拝見したいです!