歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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歌舞伎座 壽 初春大歌舞伎 第三部「通し狂言 十六夜清心」を見てきました! 2023年

早くも一月も後半となりましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

このすえひろはといえば、昨日お話した新橋演舞場SANEMORIの感想をたくさんの方にお読みいただき驚くとともに、大変うれしく思っております。

Twitterの通知欄に、普段目にしない雪のモチーフや薔薇のモチーフがたくさん見え、きっとこれは宮舘さんを応援する方々の間の文化なのだなあと気が付きました。きれいですね。宮舘さんを応援されている方々のあたたかな思いに触れ、心が温まりました。ありがとうございます。

さて、先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして壽 初春大歌舞伎の第三部を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためたいと思います。

   

第三部は「通し狂言 十六夜清心」。遊女の十六夜と道ならぬ恋に落ちた僧侶の清心は、女犯の罪で寺を追われ、苦心のすえに心中。しかしひょんなことから生き延びてしまい、悪の道へと転落していきます。一方、十六夜も死にきれず、命を拾われて第二の人生。二人の運命やいかに…という内容です。幕末から明治にかけて活躍した河竹黙阿弥の作品で、時代の転換点ならではの退廃と小気味よいセリフが魅力であります。

 

十六夜清心は冒頭の稲瀬川の場面だけが上演されることが多く、近年は通し狂言での上演がなかったので、生の舞台で拝見するのは初めてでした。拝見して見ると稲瀬川の場面だけの上演よりもずっとおもしろく、なぜに通し上演が少ないのか不思議に思います。妾宅から大詰の本宅への展開は、驚きも笑いもあり、見せ場に溢れドラマチックだと思うのですが。特に十六夜の見せ場は見た目にも変わっていておもしろかったです。

黙阿弥の作品は盗賊の人生模様を魅力的に描きながらも、「そんな彼らもやがて捕らえられる運命にある」という事実が脇に追いやられていないところが好きだなあと思いました。構成の美しさを感じます。

 

今回は、清心を幸四郎さん、十六夜を七之助さんがお勤めです。お二人はまさしく美男美女というところで、そのお美しさは幻想的ですらありました。今のお二人だからこそ味わえる美しさですね。この先お年を召され、別次元の美しさが深まっていくようすを拝見できるのもしあわせなことです。

大詰に登場する落ちぶれたお二人も、あまりの落差がおもしろかったですね。剃った髪が伸びてショートヘアのような状態になった十六夜のかつらも珍しく、興味深かったです。ともすれば男性のようなスタイルなの女性にしか見えないというのも歌舞伎役者の方の芸の力だなあと感服いたしました。

 

白蓮は梅玉さんがお勤めでした。お出ましになった瞬間、舞台の世界がぐっと引き締まったように思います。上品ながら、いや上品であるからこそに底知れぬ、大泥棒の貫録でした。吉右衛門さんがお勤めになった時のことが記憶に新しく、頭巾をかぶったお姿を懐かしく思いました。吉右衛門さんはあの四角いタイプの頭巾がとてもお似合いですよね。好きでした。

 

幸四郎さんの清心は仁左衛門さん感があるなあと思いながら拝見していたら、ずばり仁左衛門さんのご指導でありました。残念ながらこのすえひろは、仁左衛門さんの十六夜清心を映像でしか拝見したことがありません。そろそろ仁左衛門さんの清心と玉三郎さんの十六夜で通し上演をしてくださらないかなあと思いました。T&T応援団の方々の熱意にならい、歌舞伎座のアンケートにリクエストを書いてみます!

(T&T応援団についてはこちらをご参照ください)

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