ただいま歌舞伎座で上演されている二月大歌舞伎
第二部「船弁慶」は、五世中村富十郎十三回忌追善狂言と冠した演目で、富十郎さんが当たり役として長年取り組まれていたものです。富十郎さんの躍動する肉体は人間離れした凄みがあり必見です。生前の舞台をご覧になっていない方も年々増えているものと思いますが、映像が残されていますのでぜひご覧になってみてください。
今月は富十郎さんの御子息の鷹之資さんが静御前と平知盛の霊をお勤めになっています。まだ23歳の鷹之資さんがこの大役を、歌舞伎座の舞台で一カ月お勤めになるというのは大変重みのあることです。鷹之資さんが今後生涯にわたり取り組まれていく船弁慶、その歌舞伎座での最初の一歩を拝見できる大変貴重な機会であります。お迷いの方にはぜひにとおすすめいたします!
そんな「船弁慶」は、能の船弁慶を題材とした演目で、内容はざっくりこのようなものです。
源平合戦で見事平家を滅ぼしたにもかかわらず、讒言によって兄の頼朝に疎まれた義経は、都を追われることに。愛妾の静御前と別れ大物浦へ差し掛かったとき、壇ノ浦の合戦で命を落とした平家の武将・平知盛が亡霊となって現れ、一行の行方を阻む…
同じく船弁慶を題材とし、平知盛が「実は生きていて、亡霊のふりをして義経を襲う」という設定で展開するのが「義経千本桜 渡海屋・大物浦」の場面です。歌舞伎の名場面として知られるもので、併せておさらいしておきますと船弁慶の味わいがより深まるのではないかと思いました。
以前こちらのブログで簡単にお話したものがございますので、ここにひとつまとめてみます。芝居見物など何らかのお役に立つことができれば幸いです。
義経千本桜 渡海屋・大物浦とは
義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)は、「壇ノ浦で義経に滅ぼされた平家のさむらい達が実は生きていて、兄頼朝に追われる身となった義経への復讐を誓う(が、叶わない)」という内容を、壮大な悲劇、親子の情愛などなど様々なテイストの名場面で描いていく演目です。
そのうち渡海屋・大物浦(とかいや・だいもつのうら)は、壇ノ浦に滅んだ平家の運命を感じさせる大海原を舞台としています。簡単な内容としては、
①幼い安徳天皇を守りながら廻船問屋の主人に身をやつして生きてきた平知盛が、ついに義経を襲うチャンスを得るのだが、
②憎き義経の命を奪うことはできず敗れ、
③安徳天皇は義経に託されることになり、
④入水して果てる
というもの。血みどろになった知盛が、碇を巻き付けて海へと飛び込んでいく入水のシーンは壮絶かつ美しく、あまりにも悲しい名場面です。
義経千本桜のおさらい
まずは義経千本桜の全体像について簡単にご紹介いたします。別のプログラムもご覧になる方は、全体でいうとどのあたりのお話なのか把握しておくとよりおもしろいかもしれません。もちろん、単独でご覧になっても充分おもしろいお話です!
あらすじ
舞台の上で起こることとその事情などについてお話したのがこちらの回です。
そもそもの前提からお話しておりますので長くなってしまっています。しかし船弁慶の読み解きのお役にも立つかと思いますので、よろしければご一読くださいませ。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」とのゆかり
船弁慶は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも描かれていた源平合戦ゆかりの物語。壇ノ浦の戦いのシーンはドラマ本編にも登場していました。それにちなみまして、つらつらと演目のご紹介をしたのがこちらの回です。