ただいま歌舞伎座で上演されている二月大歌舞伎
第三部「霊験亀山鉾」は、片岡仁左衛門一世一代にて相勤め申し候と冠されている演目です。これはつまり、仁左衛門さんがこの演目の主役藤田水右衛門と隠亡の八郎兵衛の演じ納めをなさるということ。今回の上演を最後にもう二度とお勤めにならないということです。本当に貴重な機会ですから、お迷いの方にはお迷いの方にはぜひにとおすすめいたします!
「霊験亀山鉾」は2017年の秋に国立劇場にて、同じく仁左衛門さんのお勤めで上演されています。その際、こちらのブログでお話したものが少しだけございます。本当に古い記事のため大変拙い内容でお恥ずかしいのですが、一つまとめてみます。今月もっと意味のあるお話を足していこうと考えておりますので、芝居見物や配信、放送など何らかのお役に立つことができれば幸いです。
霊験亀山鉾とは
霊験亀山鉾(れいげんかめやまほこ)は、大南北と呼ばれた江戸の名作者・鶴屋南北の作品。1822年8月に江戸は河原崎座で初演されました。
元禄年間に実際に起こった事件「亀山の仇討ち」を題材として、敵方による返り討ちという珍しい趣向で展開する物語です。つまり、敵の悪人が善なる人々をどんどん追い込み、次々と命を奪っていく物語であります。
一般的な人間の心理としては、善なる人が活躍し、正当な方法で悪を懲らしめる姿を見たいというところですよね。しかし、物語体験においてはそう一筋縄ではいかないのもまた人間で、悪逆非道の限りを尽くす人を見てゾッとすることで、楽しんでしまう側面もあります。そんな悪の魅力がいかんなく発揮されているお芝居です。
元ネタ「亀山の仇討ち」
芝居の題材となっている「亀山の仇討ち」について簡単にお話したのがこちらの回です。28年の時を超えての敵討ちは、鎌倉時代の有名な敵討ちの曽我物語になぞらえて「元禄曽我」と呼ばれたそうです。
元ネタ「お妻八郎兵衛」
霊験亀山鉾を見ていると、登場人物がことあるごとに「鮫鞘」と言っていて、やけに刀のことを強調しているなあと感じられるのですが、それにも理由があります。もうひとつの元ネタである「お妻八郎兵衛」の事件について簡単にお話したのがこちらの回です。
”大南北” 四世鶴屋南北
作者の四世鶴屋南北は「大南北(おおなんぼく)」と呼ばれ、幕末期を代表する江戸歌舞伎の作者として現代でも人気を博しています。驚きに満ちた大胆な作劇が特徴です。ばたばたと人が殺されたり非業の最期を遂げたり、早桶(今でいう棺桶)が登場する芝居が多いので、江戸の人は芝居に早桶が出てきたら南北だと思ったとも言われています。