昨日3日、東京の国立劇場にて令和5年3月歌舞伎公演『一條大蔵譚・五條橋』の幕が開きましたね!おめでとうございます!
寂しいことに、半世紀以上の歴史を持つ現在の国立劇場は今秋取り壊しとなってしまいます。昭和期の大規模建築ならではの重厚感と昭和レトロな細部も大変魅力的です。初めての方や若い世代の方も、この機会にぜひお出かけください。
今月も無事に千穐楽まで全日程で上演が続きますようにと願っております。
又五郎さん初役の大蔵卿
今回上演される演目「一條大蔵譚・五條橋」は、名作狂言「鬼一法眼三略巻」からの名シーンです。成長後に平家を滅ぼすことになる源義経の少年期のエピソードを題材としたものです。平家全盛の世を舞台に、人知れず源氏再興を願って行動している人々のドラマを描きます。
中でも「一條大蔵譚」は上演頻度の高い場面で、様々な配役で繰り返し上演されています。
主役の一條大蔵卿は、数ある歌舞伎演目の中でもずば抜けて阿呆な人物です。しかしそれは仮の姿。表向き阿呆に見せかけ、無害な人物を装うことで乱世を生き抜き、源氏の再興を見届けようとしているのであります。ハリウッド映画さながらのドラマチックなキャラクターです。
おととしこの世を去られた吉右衛門さんが長らく当たり役としてお勤めになっていたもので、今回は同じ播磨屋のゆかりの深い又五郎さんが一條大蔵卿を初役でお勤めになります。このすえひろも大変楽しみにしております!
少し複雑な点もあるのですが、阿呆なお芝居や衣裳の仕掛けなど初めての方でも楽しめる要素がたくさんあります。源平合戦の詳細については解説パート「歌舞伎名作入門」でお話があるようですから安心ですね。
それはそうと、国立劇場の再整備事業について心配が募ります。現在、全応募者の入札辞退を受けて仕切り直しをしているようですが、どうなるのか以前不透明です。
しかしながら閉場の予定は変わらないそうで、なんだかなあと感じています。歌舞伎に限らず無形文化財の伝承を担う拠点となる大切な劇場なのですから、取り壊さずに保存していく方向にはできないものなのでしょうか。良い形で決着がつきますように。