ただいま歌舞伎座で上演中の鳳凰祭四月大歌舞伎
現在の第五期歌舞伎座が開場から十周年を迎えた記念の公演です！
夜の部で上演されている「与話情浮名横櫛」は、ともに人間国宝であり長年のゴールデンコンビでもある仁左衛門さんと玉三郎さんが主役の与三郎とお富のカップルをお勤めで、話題を呼んでいます。
この演目については過去の上演の際にお話したものはこちらにまとめましたので、ご参考にしていただければと思います。ここでも全体のあらすじを簡単にご紹介しているのですが、表面的なことばかりでお話し足りないので、せっかくですからこの機会に詳しくお話しておきたいと思います。何らかのお役に立つことができれば幸いです。
そもそも与話情浮名横櫛とは
与話情浮名横櫛（よわなさけうきなのよこぐし）は、1853年（嘉永6）1月 江戸・中村座で初演された、三代目瀬川如皐作のお芝居です。
商家の若旦那・与三郎が、土地で幅をきかせている危険な筋の男 赤間源左衛門の女 お富といい仲になったために、取り巻きから体中を刃物でズタズタに傷つけられてならず者となるのだが、数年後お富と再会してしまい…というハードなラブストーリーであります。
ちょっとくわしいあらすじ 全体の流れ
物語は大きく「木更津海岸見染の場」「赤間別荘の場」「源氏店の場」の三つの場面で展開していきます。それぞれの場面について簡単にご紹介しますと、このような具合です。現行の上演では割愛されている部分もありますがご容赦願います。
木更津海岸見染の場
木更津の浜辺で、土地の親分・赤間源左衛門の妾のお富が、源左衛門の子分などと連れ立って浜見物をしている。一方、ある事情があり江戸からこの木更津へ預けられている伊豆屋の若旦那・与三郎。お富と行き会った与三郎は、その美しさに思わず一目惚れしてしまう。
赤間源左衛門別荘の場
赤間源左衛門の留守の間に、与三郎はお富に迫られて、うっかり同衾してしまう。しかしこのようすが赤間源左衛門の子分の筋から漏れ、決定的現場を押さえられてしまう。
（木更津浜辺の場）
与三郎はさんざんに斬りつけられて虫の息に。
逃げ出したお富は海に飛び込んだが、たまたま通りかかった大店和泉屋の大番頭・多左衛門の船に運よく命を救われる。
源氏店の場
それから三年後。お富は源氏店にある多左衛門の妾宅で暮らすことに。多左衛門から生活の世話を受けながら、体の関係はないという好待遇である。
そこへ顔にコウモリのタトゥーを入れた蝙蝠安という無頼の男が、小銭稼ぎの軽いゆすりを仕掛けにやってくる。蝙蝠安は友達だという全身傷だらけの男を連れてきて、「こいつを湯治にやりたいので旅費をくださいよ」というのである。全身傷だらけの男はお富の顔を見るなり、百両もらっても帰れないと言い出す。
全身傷だらけの男とはまさに与三郎。俺はお富のためにこんな体になったのに、他の男の愛人生活とは良いご身分だなと恨みつらみを述べて悪態をつく。体の関係はないと弁明してもさすがに無理がある。そこへ、和泉屋多左衛門が戻ってきたので、気まずいお富は与三郎のことを「兄だ」と嘘をついてその場をしのごうとした。
それを聞いた多左衛門は事情を察し、お富にお守りの袋を渡して去っていく。お富が中身を見ると、多左衛門はお富の実の兄であった。与三郎の疑念も晴れ、二人は改めて愛を誓う。
次回より各ブロックについて、セリフなどを交えながら詳しくお話してまいります。
参考文献：白泉社 歌舞伎オンステージ 与話情浮名横櫛
