歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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歌舞伎座 團菊祭五月大歌舞伎 昼の部「寿曾我対面」「若き日の信長」「音菊眞秀若武者」を見てきました! 2023年5月

全国各地で地震が相次いでいますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

歌舞伎座で観劇中に被災した場合、地下空間が巨大な避難場所になっているそうですので、無理に帰宅せずにその場に留まったほうがよさそうです。災害はいつ起こるかわかりません。ぜひ頭の片隅に入れておいてください。

このすえひろはといえば、先日東京都現代美術館で開催されているクリスチャンディオールの展覧会に参りました。夢のようにきらびやかで、歌舞伎の五右衛門や道成寺をイメージしているのではないか…と思しきドレスや小物もあり、大変興奮した次第です。

さて、先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして團菊祭五月大歌舞伎の昼の部を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。

圧巻の祝幕

今年の團菊祭昼の部は「寿曽我対面」「若き日の信長」「音菊眞秀若武者」という狂言立てでした。

寿曾我対面」は、曽我五郎・十郎兄弟が父の敵工藤祐経に対面するというお馴染みのシーン。今回は梅玉さんの工藤に松也さんの五郎、右近さんの十郎という配役でした。

対面は五郎の「でェーもォー!!」とか「いやだいやだ」というようなセリフがかわいくて好きで、いつも楽しみにしています。松也さんの五郎もかわいかったです。松也さんは五郎もかわいいのですが、柔らかみのある役どころが好きで、いつか十郎も見てみたいなと思っています。巳之助さんの朝比奈が印象的でした。

 

若き日の信長」は、タイトルそのままに若き日の信長の孤独と苦悩を描いた新歌舞伎です。大佛次郎が十一代團十郎のために書きおろし、十二代、当代と受け継がれたものです。当代のお父様である十二代目團十郎の十年祭の演目として今回上演されています。信長に團十郎さん、じいこと平手中務政秀に梅玉さん、弥生に児太郎さん、木下藤吉郎に右團次さんという配役でした。

好き嫌いある内容かと思いますが私自身は好きな演目で、特に團十郎さんにはこのうえなくマッチしているなあと思います。じいの死を嘆く場面などは、真面目な十二代目と若かりし頃の当代のイメージが自分の中で重なり、なんとも胸に迫るものがありました。十二代目が恋しいです。

余談ですが、一幕目で團十郎さんが召し上がっている柿が本物なのかどうかが気になって、3階席からずっと眺めてしまいました。硬い柿を丸かじりなさるなんて、團十郎さんの歯並びはさすがだなと。

 

音菊眞秀若武者」は、寺島しのぶさんご子息の眞秀さんによる初代尾上眞秀を名乗っての初舞台です。おじいさまである菊五郎さんに團十郎さん菊之助さん松緑さんと大変豪華なお顔触れでした!楽善さんや團藏さんのお姿を久々に拝見しうれしかったです。

菊五郎さんは大きな動きのない演出でしたが、お声には朗々とした張りがあり安堵した次第です。左團次さんがご存命でいらしたらまさに團菊左そろい踏みの舞台だったなあと思うと何とも寂しい思いがしました。残念でなりません。

 

肝心の眞秀さんは、一時間近くある長尺のお芝居を一切危なげなく立派にお勤めになり、終始主役として堂々と君臨されていて、ご成長の著しさに目を見張るばかりでした…。将来どんな役者さんになられるのか楽しみにもほどがありますよね。

芝居としては岩見重太郎のヒヒ退治の物語で、このヒヒが想像以上に恐ろしくて目に焼き付いています。結構怖かったです。

シャネルが手掛けたという眞秀さんの祝幕。色合いといいなんともおしゃれですね!丸い布は一枚一枚縫い留められているそうです。

 

近くで見てみたところ、確かに一枚一枚に縫い留めた糸が見え、途方もない手仕事に驚きました。

幕が引かれると、この一枚一枚が生き物のように波打ち、まるでキラキラと光る大海原のように壮大でした!このような動きの仕掛けがある幕は、私自身は初めて見たような気がします。さすが世界的ファッションブランド、斬新な発想に圧倒されました。

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