本日13日より、日本芸術文化振興会・いわゆる国立劇場主催の公演 令和6年6月歌舞伎鑑賞教室のチケット一般発売が始まっています!
歌舞伎鑑賞教室とは、国立劇場が毎年夏に初心者の方に向けて開催していた解説プログラム付きの公演です。初めてでもわかりやすい演目、なおかつ通常公演よりもリーズナブルな価格設定となっています。この6月は、東京都荒川区のサンパール荒川大ホール(荒川区民会館)で上演されます。
今回の演目は「恋飛脚大和往来(こいびきゃくやまとおうらい)-封印切(ふういんきり)-」。少し頼りない男・忠兵衛が、恋人の傾城・梅川を身請けしたいと願いながらもお金を用立てることができず、ひょんなことから死罪レベルの禁忌を犯してしまう…というスリリングな物語です。
上方の演目で、江戸の歌舞伎とはまた違う柔らかな風情を堪能することができます。ドラマチックな物語がお好きな方にはぜひにとおすすめいたします!
公演の詳細
一般発売日
5月13日(月)10:00~
会期・上演時間
2024年6月1日(土)~2024年6月21日(金)
11:00~13:10(予定)
14:30~16:40(予定)
社会人のための鑑賞教室(18時30分開演):5日(水)6日(木)
外国人のための鑑賞教室:20日(木)
休演:7日(金)、17日(月)
チケット料金
1等席 6,000円
2等席 4,000円
学生料金
全席 1,800円
みどころ
6月の歌舞伎鑑賞教室の演目は「恋飛脚大和往来-封印切-」です。
「歌舞伎」と聞くと、隈取やド派手な衣装を着けて大きな声でポーズをとるイメージがあると思いますが、これは江戸の荒々しいカッコよさを際立たせる「荒事」という演出様式です。上方ではそれとは好対照に、男性の柔らかみのある魅力を際立たせる「和事」と呼ばれる演出様式が発達していました。「封印切」は、和事の中でも代表的な演目であります。
内容をざっくりとご紹介いたしますと、このようなものです。
飛脚問屋の養子である忠兵衛は、傾城の梅川と恋愛関係にあるのですが、身請けに必要なまとまったお金を用意することができずにいます。飛脚問屋というのは簡単に言えば「人のお金を預かって確実に届ける」という商売で、信用が何より大事です。人のお金に手を付けるような真似をすれば死罪は免れぬ、厳しい職業なのでありました。
そんななか、忠兵衛の友達の嫌味なお坊ちゃま・八右衛門が、俺が梅川を身請けすると言い出します。八右衛門による嫌味、悪口、煽りなどに耐え切れなくなった忠兵衛は、俺にだってお金はあるんだと、大切なお客さんのお金の封印を切ってしまうのです。
忠兵衛はなぜそんなことをしてしまったのか。人間の弱さ、哀しさは、理屈では語れないものですね。間違いと知りながらも罪を犯す人間の姿を描いた、濃密なドラマです。
今回は鴈治郎さんが忠兵衛をお勤めになります。鴈治郎といえば上方の大きな名跡であり、当代見られる配役の中では非常に正統派です。お父さまの坂田藤十郎さんも素晴らしい忠兵衛をお勤めでした。多くの方が連想される歌舞伎のイメージとは一味違う濃厚な味わいは、癖になるような魅力がありますので、ぜひ一度ご覧になってみてください。
さておき、半蔵門の国立劇場は昨年10月に閉場し、以降は各地の劇場を巡っての公演が続いています。他の伝統芸能も一大拠点を失い、再開の目途も立っていないというのはいかがなものでしょうか。
無形文化財は伝承者の命の中にしか存在しない非常に儚いものです。過去に学び、文化を伝承していくことは、将来の不確かな世を生きていくうえで非常に重要です。国にはまず問題点と認識し、早急に対応していただきたいと切に願います。