歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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歌舞伎座 團菊祭五月大歌舞伎 夜の部「伽羅先代萩」「四千両小判梅葉」を見てきました! 2024年

みなさまいかがお過ごしでしょうか。五月もはや後半となり、南では梅雨入りの地域もあるようですね。歌舞伎で梅雨といえば髪結新三ですが、あいにく上演がありません。せめてカツオでもいただこうと思います。

さて、先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして團菊祭五月大歌舞伎の夜の部を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。

   

團菊祭五月大歌舞伎 夜の部は、「伽羅先代萩」「四千両小判梅葉」の二本立てでした。

伽羅先代萩」は、菊之助さんの政岡に團十郎さんの仁木弾正というまさに團菊の豪華な取り合わせです。さらに一子千松をご子息の丑之助さん、鶴千代を種太郎さん、八汐を歌六さん、栄御前を雀右衛門さんがお勤めになりました。

政岡と千松が実の親子という配役は、私自身は確か初めて拝見したと思います。拝見する前から充分想像できていたことですが、丑之助さんの千松はさすがです。名子役上演のタイミング、配役の妙でまたとない体験ができてとても幸せでした。

 

その印象のせいもあるのか、菊之助さんの政岡からはこれまで拝見した政岡のなかでも強い母性を感じました。最後の嘆きの場面だけではなく、千松をちょこちょこと叱るやりとりなどに日常のムードが漂っていたように思います。

そんな菊之助さんの政岡を拝見していて、以前何かのドキュメンタリー番組で見た場面がリアリティを持って胸に浮かんできました。事故で我が子を亡くされたお母さまが、最後に限って叱って送り出してしまったことをひどく嘆いておられた姿です。政岡の置かれている状況とは違いますし、現実の事件と並べてはならないことは理解していますが、母親という存在の悲しみが突き刺さってくるようでした。

 

そんな空気をがらりと変えるような、團十郎さんの仁木弾正の存在感。本当に浮世絵のようでしたね…。むしろ、浮世絵にしていただきたいくらいです。昼の部でもそうでしたが、團十郎さんと菊之助さんの好対照にとても見応えを感じます。ぜひ團菊祭だけとはいわずちょくちょく拝見したいです。叶うでしょうか。

 

続く「四千両小判梅葉」は、黙阿弥が実際に江戸城で発生した御金蔵破りの事件に取材したとされる明治時代の演目です。今回は富蔵に松緑さん、藤岡藤十郎に梅玉さんという配役でした。おさよでご出演だった梅枝さんを、梅枝のお名前で拝見するのはこれが最後なのだなあと思うと大変感慨深いものがありました。

数年前に菊五郎さんの富蔵で上演されたのですが失念しており、拝見してしばらくしてからやけにリアリティのある獄中シーンの強烈さを思い出してきたという具合でした。反省しております。

黙阿弥の作品は江戸と明治でだいぶ芝居のテンポが変わるように感じているのですが、これはどういったことなのでしょうね。リアリティ重視の傾向が劇作にも色濃く表れていたということなのでしょうか。興味深く思います。

残念ながらこのすえひろが拝見した日は鷹之資さんが休演だったのですが、不幸中の幸いで、莟玉さんが縄で縛られた受刑者の梅玉さんを見下ろすという非常にレアなシーンを拝見することができました。

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