現在、荒川区のサンパール荒川(荒川区民会館)にて、令和6年6月歌舞伎鑑賞教室『恋飛脚大和往来-封印切-』が上演されています!
歌舞伎鑑賞教室とは、永田町にあった国立劇場で毎年夏に開催されていた解説プログラム付きの公演です。歌舞伎を初めてご覧になる方にもわかりやすかったり、ドラマチックで魅力のある演目が選ばれており、なおかつ通常公演よりもリーズナブルな点が魅力です。
最初にどんな演目を見たらいいか悩んでしまうという方には、この機会にぜひにとおすすめいたします!
間違いを犯す人の弱さが沁みる名作「封印切」
今回の演目『恋飛脚大和往来-封印切-』は、上方で生まれた名作です。
歌舞伎といえば江戸のド派手なイメージが強いかもしれませんが、上方では胸に染み入るようなドラマチックな名作がたくさん生まれています。
『恋飛脚大和往来ー封印切ー』はどのようなお話か、一言で申せば、ふとした瞬間に取り返しのつかない間違いを犯す人間の性を描いていると思います。
主人公は、飛脚問屋の養子・忠兵衛。少し頼りない男で、傾城の梅川と恋仲にありながら、まとまったお金を用意することができず、身請けができていません。
そうしてうかうかしているうちに、お金持ちのボンボンである友人・八右衛門が、金にモノを言わせて梅川を身請けしたいと言い出すのです。
そんな八右衛門から嫌味を散々言われ、ついカッとなった忠兵衛。
仕事で預かっていた金包みの封印を切り、俺かて金ならなんぼでもあんねん!!と、みんなの前で見せつけてしまうのであります。
実はこの「金包みの封印を切る」という行為が大きなポイントです。
飛脚問屋という仕事は、お客様のお金を預かって先様に届ける商売であり、そのお金に手を付けるなど言語道断。封印を切っただけでも死刑に値するという非常に厳しいものなのでした。
忠兵衛はなぜそれをわかっていて、金包みの封を切ってしまったのか。理屈を超えて感情が動いてしまった、そんな瞬間がとてもドラマチックに描かれています。
ドラマや映画がお好きな方には特におすすめしたい演目です。この機会にぜひおでかけくださいませ!