ただいま歌舞伎座で上演中の三月大歌舞伎!
昼の部「渡海屋・大物浦」のお話をしております。
あらすじ前編はこちらです…
ざっくりとしたあらすじ 中編
義経一行が九州へ向かう船に乗り込むため渡海屋を去ってゆくと、
そもそもこれは
桓武天皇九代の後胤
平知盛 幽霊なり
という能「船弁慶」の謡が聞こえ
一間のうちより真っ白い狩衣と銀の鎧兜に身を包んだ銀平が現れます…
実はこの銀平、壇ノ浦で命を落としたと見せかけて
平家再興のチャンスを窺っていた新中納言平知盛だったのです…!!
加えて娘のお安は安徳天皇、
妻のお柳は天皇の乳人・典侍の局(すけのつぼね)でありました。
渡海屋の下女や従業員たちも、お付きの女房や平家のさむらいたち。
先ほど乱入してきた相模五郎・入江丹蔵にいたるまで全てが知盛配下のさむらいであります。
すべては義経主従を油断させ船に乗せて海の上で討ち取らんという
平家再興のための策略でありました…。
パブリックドメイン美術館より 歌川国芳「摂州大物浦平家怨霊顕る図 」
誰よりも高貴なお方・安徳帝から盃を賜った知盛は、
亡霊の姿をした配下のさむらいたちを従え、義経たちを追って出陣!
白と銀を貴重とした知盛の出で立ちも、亡霊に見せかけるためのものなのです。
登場の際の謡(うたい)には、ただならぬ怨念を感じゾクゾクしてしまいますよ。
謡の演出は後の方にも出てきて舞台の上の迫力を増していますから、よく注意なさってみてくださいね。
さて、場面は変わって渡海屋の奥座敷。
安徳帝と典侍の局、女房たちは高貴な衣服に改めて、知盛からの良い知らせを今か今かと待ちわびているようです。
そこへ相模五郎が「御注進!御注進!」とやってきました。戦いのようすを伝えに来たのですね。
相模五郎いわく、戦は最悪の展開を迎えていました。。
なんと、こちらの計略は義経主従に察知されており、返り討ちにあったというのです…!
かえって攻め入られ平家は劣勢…
ややや、大変なことになりました…あれほど周到に謀ったはずなのに。
知盛の思いはこのまま報われないのでしょうか。
相模五郎は知盛の元へと戻ってしまいます…
渡海屋の奥座敷からは広々と海が見え、今まさに知盛たちが戦っている船の様子も窺うことができるので
残された典侍の局たちはそれを見ながらどうしたことかとうろたえるばかり…
すると、
遠くに見えていた船の松明が、一斉に消えてしまいました…。
ああ、知盛は破れたのだわ。。と覚った典侍の局と女房達。
なす術なく、おおお…と悲しみにくれるしかありません。
そこへ大けがをした入江丹蔵がなんとか駆けつけました。
もう絶望的な状態です…御覚悟を。
と告げると、
我が身に刃を突き立て敵方のさむらいを道連れにして、ドブンと海へと飛び込んでしまいました。
こうなっては典侍の局たちもいよいよ覚悟を極めければならず、しずしずと浜辺へ出てゆきます…みなさん美しい衣装ですが、悲壮感に包まれています。
しかし、小さな安徳帝はどういう状況なのかわからずにいました。
典侍の局はそんな安徳帝を優しく諭します。
「海の底には極楽浄土があるのです。みんながそこにいますから、これから行くのですよ」
「あの恐ろしい海の底にたったひとりで?」
「私も一緒に行きますからね」
「乳母が一緒なら怖くない。どこへだって行けるよ」
との帝の言葉に典侍の局や女房達も涙を堪えることができません。
立派に歌を詠む安徳帝の姿に清盛をはじめとする平家の面々の無念を思い、泣き暮れるしかない女性陣です。
激しい戦の音が聞こえてきました。
「私たちは先へ行き、帝の道案内をいたしますからね」と女房達は次々に覚悟を決め、荒れた冷たい海へと飛び込んでゆきます…
もはやこれまで。
安徳帝を抱えた典侍の局が「海の神様、帝の行幸ですよ…!お守りください…!」と飛び込まんとするところ、
ぞろぞろと駆けつけた義経の家臣たちに取り押さえられてしまいました。
大変なことになりました…安徳帝と典侍の局はどうなってしまうのでしょうか?
そして、返り討ちにあったという知盛はどうしているのでしょうか?
後編に続きます!