歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。 歌舞伎歴10年の20代。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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歌舞伎のことば:ギャップが涙を誘う「モドリ」の演出

 今月歌舞伎座で上演されていた十二月大歌舞伎

第一部「実盛物語」で使われていた歌舞伎の演出用語について

少しばかりお話してみたいと思います。

なんらかのお役に立てればうれしいです(人'v`*)

 

悪人だと思いきや…

実盛物語には、瀬尾というおじいさんが登場しましたね。

最初はものすごく憎たらしい平家方の敵として

実盛と共に九郎助の家にやってきます。

 

しかし、物語の終盤には自ら太郎吉の短刀を受け、

太朗吉の母・小万の父親であることを明かします。

「平家譜代の瀬尾を討った功で、太朗吉を若君の家来にしてほしい」

と葵御前に願い出て、自ら首を落とし絶命する…という役柄でした。

 

このような

悪人であった人物が

実は善人だった

あるいは

悪人であった人物が心を入れ替え、

善なる心や本心を取り戻した

などという「」→「」の演出のことを

歌舞伎や人形浄瑠璃ではモドリと呼んでいます。

 

現代の映画やドラマでも、

嫌な奴だと思っていた人が本当は善い心を持っていたり

やむにやまれぬ事情から悪にならざるを得なかった…

といった手法はよく使われていますので、

古今東西、普遍的な作劇法のひとつと言えます。

 

モドリの役柄では、

悪人である間に善なる心をほんのりのぞかせてしまうのはタブーとされるものもあり

「底を割る」などという表現で戒められているそうであります。

悪人の時は徹底的なであるからこそ、その後のが際立つわけですね。

事情や心の内奥を複雑に描く、味わい深い役柄であります。

しかし中には、底を割るのが型になっているものもあるそうです。

奥深い世界です(´▽`)

 

モドリの典型的な役はほかに

義経千本桜 すし屋の いがみの権太

摂州合邦辻の 玉手御前

などがあります。

 

このすえひろ「いがみの権太」には、何度泣かされたことかわかりません。

上方と江戸で少し味わいが異なりますが、

特に上方の演出はエモーショナルで、感情を揺さぶられてしまいます。

 

モドリの役というのはだいたい、

悪とみられた自分の善なる本心を切々と語ってから命を落とします。

この場面がなんとも胸に沁みる、そんな役柄です。゚゚(´□`。)°゚。

 

参考:新版歌舞伎事典/歌舞伎登場人物事典

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