歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい雷神不動北山櫻 その一 成田不動の申し子

ただいま歌舞伎座で上演中の

團菊祭五月大歌舞伎
十二世市川團十郎五年祭

十二代團十郎さんがこの世を去られてから五年の追善として

ご子息の海老蔵さんが当たり役をお勤めになり

團十郎さんらしく明るく華やかな興行となっています!

 

そんな今回の團菊祭にちなみ

昼の部「雷神不動北山櫻」について、少しばかりお話したいと思います。

芝居見物のたのしみのお役に立てればうれしいです。

成田不動の申し子が大坂に登場

雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)はもともと、

1742年(寛保2年)のお正月、大坂は佐渡嶋長五郎座において初演された演目。

全五段に渡る長い長い時代物のお芝居です。

 

初演で粂寺弾正・鳴神上人・不動明王の三役を演じたのは当時の二代目市川海老蔵

二代目海老蔵がはじめて大坂へ上った際の興行でした。

初代市川團十郎の当たり芸「鳴神」と「不動」に、

当時上方で流行っていた磁石にまつわるサイエンスミステリーを取り入れた「毛抜」や

朝廷の騒動などを背景にして物語を展開させまとめたものであります。

 

いまでは「海老蔵」のお名前は團十郎になる前のものというイメージですけれども、

歴史の中ではそうとも限りません。

この方は二代目市川團十郎として一世を風靡したあとで

お父さんにあたる初代團十郎の幼名「海老蔵」を二代目として名乗っています。

 

二代目團十郎は、初代が成田不動尊に祈願して授かったという噂があったようです。

そのことから二代目は「成田不動の申し子」と呼ばれ、

非常に見事な役者ぶりで江戸の人々を夢中にしていました。

 

まさしく荒ぶる神様のような存在として尊ばれていたので、

不動明王」の役というのもそれはそれは神々しく映ったのだろうと思います。

江戸で評判の千両役者・團十郎を初めて見た大坂の人々は

いったいどんな思いだったのでしょうか。

 

今回の雷神不動北山櫻は、

ちょうど成田山開基一〇八〇年の記念として上演されています!

成田山と成田屋のゆかりは深く、いろいろと長くなりますので

またの機会にお話できればと思います。

 

参考:新版 歌舞伎事典/日本大百科全書

新版 歌舞伎事典

新版 歌舞伎事典

 

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