歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。 歌舞伎歴10年の20代。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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歌舞伎のことば:どろぼうたちが大暴れ「白浪物」

ただいま歌舞伎座で上演中の

團菊祭五月大歌舞伎
十二世市川團十郎五年祭

 

夜の部「弁天娘女男白浪」は、

歌舞伎の演目のなかでもとりわけ有名なものです!

今月初めて歌舞伎をご覧になった方もおいでかと思い、

この演目についての歌舞伎の用語についてのお話をひとついたします。

芝居見物の楽しみのお役に立てればうれしく思います。

ニヒルなヒーロー「白浪物」

古今東西、どろぼうを主人公とした物語はたくさんありますよね!

アウトローというのはなぜだか人々の心を躍らせるようです。

 

今月上演されていた「弁天娘女男白浪」にも、

日本駄右衛門・弁天小僧菊之助・南郷力丸・忠信利平・赤星十三郎という

5人のどろぼうたちが登場しました。

しかも追手を前にしてわざわざ自分達の生い立ちからなにから

堂々と発表する…という現実的に考えるとなんともおもしろい場面が見どころです。

 

名乗りの終わりの方で「誰白浪の五人連れ…」というせりふがありました。

 「白浪(しらなみ)」というのはそもそも、盗賊のことを意味する言葉です。

これは中国・後漢の末に、黄巾賊というどろぼうの余党たちが

西河の白波谷という場所に隠れてたからものを盗み悪さをしていたのを

白波賊」と呼んでいたという故事から来ています。

 

こうしたどろぼう物語をエンターテインメント化したのは

松林伯円という幕末の講釈師。講釈師というのはいまでいう講談師です。

小机をパパンとしながら物語をいきいきと読む芸能を生業とする方々です。

 

この白浪の講談が不安定な幕末の世を生きていた人々に大いにうけていたので、

幕末の名作者・河竹黙阿弥が歌舞伎へと取り込んだところこれもまた大ヒットに!

弁天娘女男白浪」や「三人吉三廓初買」などなど

今でも大人気の狂言が続々と生まれました。

 

こうしたどろぼうたちが活躍するお芝居がひとつのジャンルとなり

白浪物(しらなみもの)と呼ばれています。

黙阿弥はこれがたいへん評判になったので「白浪作者」といわれたそうです。

 

白浪物のどろぼうたちというのは

悪さはしていても義理人情を重んじていたり、

運命に逆らえずに報いを受けたり、改心して死んでいったり、

「世の中を震え上がらせるようなものすごい大悪党というわけでもない」

というのがひとつの特徴です。

 

口を少しゆがめて笑う自虐的でニヒルな感じのワルというイメージでしょうか。

150年以上の時を経た今でも、私たちのこころを掴んでやみません。

 

参考:新版歌舞伎事典/日本大百科全書

新版 歌舞伎事典

新版 歌舞伎事典

 
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