ただいま国立劇場で上演されている
平成30年7月歌舞伎鑑賞教室
日本振袖始
この上演で初めて歌舞伎をご覧になった方も
大勢おいでのことと思い、少しばかりお話してみます。
わずかでも芝居見物のたのしみのお役に立てればうれしく思います!
ヤマタノオロチともののけ姫に関連が
日本振袖始(にほんふりそではじめ)は、
1718年(享保3年)大坂は竹本座にて初演された時代物の人形浄瑠璃。
作者は「日本のシェイクスピア」として知られる謎多き天才・近松門左衛門です!
日本振袖始の流れを本当にざっくりとお話すると、
①スサノオノミコトが奪われた宝剣を求めて美濃国の化け物たちを退治し、
➁出雲の簸の川にたどり着き、
➂八つの頭のある大蛇・ヤマタノオロチの生贄になりそうな恋人・クシナダヒメ(稲田姫)を救い、
④ヤマタノオロチを見事退治し、めでたしめでたし…
というものです。
ヤマタノオロチというと子供のころに
妖怪の本や日本昔話などでよく見聞きしたものですが、
実態についてはよくわかりませんので少しばかり調べてみました。
ヤマタノオロチは漢字で「八岐大蛇」と書き、
なんと八つの丘と八つの谷にわたるとんでもない大きさのヘビなのだそうです!
頭が八つで、尾も八つ、眼は赤いほおずきのよう、
背中には松だの柏だのという割としっかりした木が生えてしまい、
そして、
どうしてなのかお腹がいつも血でただれているのだそうです……!
想像しただけでギャーッといいたいところですね。
しかしこのヤマタノオロチのようすというのは、
山陰の谷沿いで行われていたたたら製鉄の炎なのではないか…
という考えもあるようです。
たたら製鉄といえば映画「もののけ姫」にも登場しますよね!
確かに、スサノオがヤマタノオロチを倒したときにしっぽから出てきたという
「天叢雲剣」というのはのちに皇室の三種の神器として数えられているそうなので、
本当にこの出雲の地では、古代から製鉄が行われていたのではないかとされています。
私は大学時代にグレートジャーニーで知られる冒険家・関野吉晴さんのたたら製鉄ワークショップに参加したことがあるのですが、
踏んで踏んで踏んで、果てしなく踏み続け、やがて夜が明け、気が遠くなったのを覚えております。
現代において人類史を再現する関野吉晴さんの純粋なパワーもさることながら、古代の人々の根気というのは尋常ならざるものがありますね。
そうした根気に支えられ、現代に至ったと思うと本当にありがたいことです。
ヤマタノオロチそのものはたたら製鉄から生まれたファンタジーだとしても、
剣の実物に関する様々な情報のなかに、なにやらスサノオの存在を示すものをちらほら見ました。
えっ…スサノオは本当にいたということなのか!?普通の人間なの!?と、なにやら動揺しております…!
新井白石は古史通において「(日本神話の)神は人なり」と書いているそうですが、本当のところが知りたいです。
全く関係ありませんがオロチと聞くと
松尾スズキさんの愛猫が思い出されてホロリとします…
参考:日立金属/和鋼博物館/出雲観光ガイド/神々のふるさと山陰/日本大百科全書