歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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歌舞伎のことば:芸の道の「一世一代」

ただいま歌舞伎座で上演中の四月大歌舞伎

夜の部では「絵本合法衢」が通し狂言にて上演されています。

 

今回のこの上演にちなんだ

歌舞伎にまつわることばについてお話したいと思います。

歌舞伎を初めてご覧になったばかりの方も、

ひとつ覚えていただけたらうれしいです(人'v`*)

 

生涯をかけた芸の道「一世一代」

今回の「絵本合法衢」は

”片岡仁左衛門 一世一代にて相勤め申し候”と銘打たれています。

 

これは、仁左衛門さんがご自身で銘打たれたわけではないようです。

ご自身の体力的なつらさから「もうこれっきり」とお話されたところ、

松竹の方によりこのような銘が付けられたのだと

インタビューでお話なさっていました。

 

一世一代(いっせいちだい)」というのは、

年齢を重ね円熟の時を経た能や歌舞伎の役者が、

引退を覚悟して勤める最後の舞台・演目・役柄のことをいいます。

 

つまりは、「もうこの演目は一生演じません」という宣言であります。

歌舞伎役者の場合は、能などに比べ特に大きくこのことをうたう傾向にあるようです。

 

一世一代」の興行は江戸時代からよく催されていたようですが、

現代とは少しニュアンスが異なり

歌舞伎役者としての本当の引退の宣言として使われていた側面もあったようです。

 

寛政期を代表する名優であった五代目團十郎の一世一代興行は特に有名で、

芝居を終えるとすぐにすっかり剃髪して隠居スタイルとなり

周囲を驚かせたと伝わっています。

引退後は本所の反古庵に隠居し、文化人たちと俳句を詠むなどして、

風雅な日々を過ごしたようであります。

 

現代の歌舞伎役者の方々は、

80代という年齢を迎えたり大病をされても

「引退」というスタイルは取らずに

その命の限り現役で舞台に立たれる方が多いようです。

 

一世」は生まれてから死ぬまでの一生涯、人がこの世に生きている間。

一代」もまた、同じ意味であります。

一生一度」ではなくて「一世一代

同じ意味の言葉が重なって強調されています。

 

江戸時代の昔から芸の道に生きる方たちは、

舞台の上にその生涯のすべてをかけている…という

上原輝男先生の捉え方にふれると、

目の前の芝居のひとつひとつがたからもののように思えます。

 

www.kabuki-bito.jp

 

参考:新版歌舞伎事典

新版 歌舞伎事典

新版 歌舞伎事典

 

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