歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい仮名手本忠臣蔵 その九 五段目から七段目までのあらすじ!

ただいま国立劇場で上演中の

通し狂言 仮名手本忠臣蔵

最後の月である今月は第三部の上演ですが、もしかしたら今月初めて忠臣蔵をご覧になる方もおいでかと思い、先月上演されていた第二部までのあらすじをお話したいと思います。

あくまでもざっっっくりとしたあらすじですので、お手柔らかにお願いいたします(人'v`*)

第一部までのあらすじはこちらです。

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五段目

塩冶判官の大事に居合わせることができなかった勘平は、おかるの実家に身を寄せて狩人として暮らしていました。

五段目の舞台は山崎街道という寂しい野道で、雷が鳴り雨の降り注ぐ夜の風景です。

狩人の勘平は火縄を使っていますが、雨では火縄も湿ってしまいます。

困ったな…と思っていると、ひょんなことから塩冶家のさむらい千崎弥五郎と再会しましたΣ('0'o)

実は勘平は、由良之助たちが師直家に討ち入るつもりらしいという噂を耳にしていたのです…ここで千崎弥五郎に会えたのはチャンスと思い、その徒党に自分もぜひ加わりたい!と申し出ました。

すんなりと教えてはくれない千崎弥五郎でしたが、敵討ちの御用金を集めているんですよ…と打ち明けてくれたのです。

勘平必ずお金は用意します!と誓って今の住まいを教え、二人はひとまず別れてゆきます。

 

やがて雨も小降りになり、暗い山崎街道をおかるのお父さんである与市兵衛というおじいさんが歩いてきました…

娘婿である勘平さんは元さむらい。

娘のおかるから愛する勘平さんを元のさむらいにしてあげるために身を売ってでもお金を作りたいのだと言う強い気持ちを聞かされ、妻のおかやともよく話し合い娘の意志を尊重することにしました。

今は勘平さんに内緒で祇園町へ行きおかるの身売りの話をつけてきた帰り道なのです。

おかるの身を売ったお金は百両。その半金である五十両を懐のお財布に入れ、大事におうちへ持って帰ります。

雨のために提灯の明かりが消えてしまい、仕方なくひとやすみすることにしました。

 

が、その時。

草むらの影から何者かの手がぬっと現れ、お財布を盗られたばかりか刺し殺されてしまったのです!。゚゚(´□`。)°゚。

刺し殺した男は斧定九郎

塩冶家家老の斧九太夫の息子ですが、どうしようもないドラ息子のため勘当された浪人です。

「五十両…」

そう呟いて揚々と帰ろうとする定九郎

 

とそこへ、突然イノシシが突進してきました!

定九郎が咄嗟に避けたその時、

\パァーン!!/と乾いた銃声が!

イノシシを狙った狩人の鉄砲が、定九郎に命中してしまったのです(・0・;)

五十両を手にしたのもつかの間、定九郎はその場で息絶えてしまいました。

 

辺りは暗闇…

イノシシを獲ったと思いこんでいる狩人が山崎街道へやってきました。

なんとその狩人は勘平だったのです。

仕留めたはずのイノシシを引き上げようとして、「こりゃ、人!」とうろたえる勘平

薬は持っていませんか、薬は持っていませんか!と倒れている人の懐をまさぐると、そこにはずっしりとお金の入ったお財布が…(・_・;)

一刻も早くまとまったお金を用意して敵討ちの徒党に加わりたい一心の勘平です。

もうこうなったら仕方がない、えい!とお財布を奪って弥五郎のもとへ急いで向かうのでした。

六段目

ところかわって、与市兵衛さんのおうちです。

すでに夜は明けており、娘おかると妻おかやが帰ってこない与市兵衛さんを心配しています。

おかるを売った先のお店である祇園町・一文字屋のお才さんと源六さんが迎えに来ており、

源六さんは与市兵衛さんは昨日の夜半金の五十両を受け取って確かに帰った。今残りの五十両は渡すから、とにかく早く店に来いと急かして、おかるを無理やり駕籠に乗せてしまいましたヽ(´o`;

 

母娘が困っているところへ何も知らない勘平が帰ってきて、なんだなんだとおかるを家に連れ戻します。

おうちに入った勘平が雨の様子やらなにやらを話して聞かせながら、おかやの手伝いで濡れた着物を着替えるうち、

ぽとり・・・と落ちたあのお財布!大変です、あんなことをしてお財布を奪ってきたなんて知られてはまずいのです(・_・;)

おかやが拾い上げるとバッと奪って、なんでもないなんでもないと平静を装う勘平でした。

そんなこととは知らないおかやおかるの身売りの話を打ち明けますが、勘平はその心に深く感謝をしながらも「お金は工面できることになったので、身売りはしないで大丈夫ですよ」と話しました。

 

これには一文字屋の源六さんも、おいおい冗談じゃないよと怒り出します!

お才さんも、昨日与市兵衛さんと話がついていますから。これと同じ財布に入れて五十両を既に渡してあるんですよ、と言うのです。

そうしてお才さんに示された布地の柄は縞模様。

(これと同じ財布…えっもしかして…)と懐の財布を確認する勘平

 

…同じものではありませんか。

べっとりと血のついた財布、昨日撃ち殺した遺体から奪ってきた財布も、同じ縞模様です!

大変なことになりました。自分は舅を撃ち殺してお金まで奪っていたのです。

どうしよう、どうしようとうろたえる勘平

これではもうおかるを売らないわけにはいかなくなりました。

「あっ、与市兵衛さんには昨日会いましたよ…」とウソをついてとりあえずこの場をしのぐことにして、おかるとの別れを惜しみます。

 

さっさと連れていかれてしまったおかる。あとにはおかや勘平だけが残されました。

とそこへ、狩人仲間によって与市兵衛の遺体が運ばれてきたではありませんか(・0・;)

おかやは当然、パニックに陥り…

婿殿、ウソをついたのね?!さっき懐から落としたこの財布はうちの人を殺して奪ったんでしょう!

親殺し!!人殺し!恩知らず!

と散々に責め立てます。

 

とそこへ弥五郎原郷右衛門がという塩冶家のさむらい2人が訪ねてきました。

「不忠を働いた勘平からのお金は受け取れない」と由良之助から伝言されて、お金を返しにきたのです。

こうなったらおかやは黙ってはいません。

それは舅を殺して奪ったお金なんですよ!この人はそういう人なんです!

と訴え出ます。

これには仰天の弥五郎郷右衛門

なんてことを!判官への恥辱!と勘平を叱ります。

 

待ってください、聞いてください、とすがりつく勘平は、昨日誤って人を殺してしまった顛末を語り…突然グッとお腹に刀を突き立てます!

それを聞いた弥五郎が与市兵衛の死体を改めて見てみると、傷痕は鉄砲によるものではなく刀によるものだとわかりました。

郷右衛門が道すがら鉄砲で死んだ定九郎の遺体を見かけていたことから、二人は勘平が殺したのは定九郎であることを確信します。

定九郎が与市兵衛を殺し、勘平は親の敵を討っていたのです。

 

これを聞いた勘平は虫の息で「母上、御疑いは晴れましたか」と安堵。

郷右衛門はそんな勘平に血判が並ぶ討ち入りの連判を差し出して、四十六人目となることを許します。

こんなことになるのも自分が主君の大事に「色にふけったばっかりに」と悔いる勘平は、静かに息を引き取りました。゚゚(´□`。)°゚。

七段目 

さて舞台はがらりと変わり、華やかな祇園の一力茶屋

愛する勘平さんがそんなことになっているとはつゆほども知らないおかるが、勘平さんに会いたいなぁどうしているのかなぁと思いながら懸命に勤めているお店です。

 

このお店にはあの大星由良之助が通い詰めています。

由良之助は塩冶判官の敵討ちなんて忘れてしまったかのように豪快な遊びっぷりです。

敵討ちの志に燃えるさむらいたちはその様子に大激怒しており、一力茶屋までやってきて鎌倉へはいつ下るのかと問い詰めますが由良之助は知らん顔です。

もういっそ斬ってやろうか!といきり立つと、ねいねいねいねい!とと止めに入る奴さんが。

彼は寺岡平右衛門といって、身分の低い足軽でありながら人一倍忠義心に溢れる男です。その場を収め、どうか徒党に加えてくださいと由良之助に願い出ますが取り合ってはもらえません…

由良之助は酒に酔い、横になってすやすやと眠り始めてしまいました(。´_`。)

 

実はこの一力茶屋には由良之助の動向を探るため、元塩冶家家老の斧九太夫と高師直の家来・鷺坂伴内という男が潜んでいます。

斧九太夫はなんと、既に師直方に寝返っていたのです…!なんたることでしょう。

息子・定九郎もひどい男でしたが、お父さんもお父さんであります(・・;)

 

さて、由良之助が一人すやすやと居眠りをしているところへある美少年がやってきます。由良之助の息子・大星力弥です。

彼は判官の妻・顔世御前からの秘密の手紙を届けに来たのです。

突如正気に戻って眼光鋭く手紙を受け取る由良之助

手紙を読もうとするところへタイミング悪く九太夫がやってきたので、由良之助は再び酔ったそぶりを見せてそのまま茶屋遊びをすることに。

 

今夜は塩冶判官の命日の前夜であり、本来は肉や魚をやめて精進すべき日です。

それを知っていて九太夫由良之助にタコを勧めるという策略に出ます。

由良之助がタコを食べ、さらには鳥鍋をしようなどと言い出す様子を見て、もう敵討ちの意志はないのだなと確信する九太夫

しかしさっきの手紙がどうにも気になります…縁の下に潜んで、盗み読みをすることにしました。

 

さきほどおかるがここで勤めているとお話しましたが、いよいよここで登場します!

折に二階へ・・・

おかるは一力茶屋の二階で風に吹かれながら酔いを醒ましていました。

ふと下を見ると、由良之助が釣灯籠の灯りでなにやら手紙を読んでいるではありませんか。

おかるあれラブレターかなぁ、いいなぁー(n´v`n)と思い、鏡を使って手紙を盗み見てしまいます。なんとも恋愛体質のおかるらしい発想ですが、ものすごい視力ですよね。

 

縁の下からは九太夫が、二階からはおかるが覗き見ているという猛烈に無防備な状態で密書を読んでいる由良之助です。

おかるのかんざしが落ちた音で、ハッ!見られていた!あっ手紙が破れてる!下にも人がいるぞ!と気づいてしまいました。

これは大変です(・0・;)

由良之助は酔った振りをしながらおかるを一階に呼び寄せて「惚れた!身請けしよう、三日だけでいいよ、夫のところへ帰っていいよ。じゃあそういうことでお店の主人に言ってくるからねー(´▽`)」と明るく持ちかけます。

 

おかるは勘平さんに会いたい一心ですから、それはもう大喜び。

浮かれながら勘平さんに手紙を書いていると、先ほどの奴さん・平右衛門が現れました。実は平右衛門はおかるのお兄さんなのです!

妹に突然舞い込んできた身請け話を聞いて、平右衛門は喜ぶどころか呆れてしまいます。馴染みでもないおかるを勘平の妻とも知らないで突然身請けしようなんて、仇討ちの意志がないのだなと思ったからです。

そんな平右衛門に、それが実はあるみたいよ・・・おかるは先ほど盗み読みした手紙の内容を話して聞かせます。

 

平右衛門は由良之助が口封じのためにおかるを身請けし殺すつもりだなと勘づきました…。

そこで思い切って、お父さんが殺されてしまったこと、おかるの愛する勘平さんも切腹して既に亡くなってしまったことを告げます。

おかるはまもなく殺されるはずで所詮助からないのだから、自分は妹の首を手柄にして敵討ちのお供をしたい。どうかその命をくれよとおかるに懇願します。

勘平さんの死を知って、気を失ってしまうほどにショックを受けるおかるです。

どうしたらいいのかうろたえ、嘆きに嘆き、勘平さんがいないのならこの世に未練はないからいっそ殺してほしいと潔く兄に申し出ました。

 

平右衛門は喜び、いざ命を取らんとするところへ、由良之助が止めに入ります!

兄と妹のこの心を見て、平右衛門には東のお供を許し、おかるには亡くなってしまった夫の代わりに手柄を立てさせようと、縁の下に潜んでいた九太夫に刀をぐっと一突き刺させました。

傷を負った九太夫を引きずりだし、獅子身中の虫とは己がことだ!獄卒め!と打ちのめして平右衛門に「加茂川で水雑炊を食らわせい」と命じます。これはつまり川に投げ込んで殺してやれという意味であります。

ここの由良之助は本当にかっこよく、たまらないのです(*´艸`)

 

そしてこの段は幕となり、おかる勘平の夫婦のドラマも締めくくりとなります。

駆け足にも関わらず非常に長くなってしまいましたが、拙いご説明でなんとなく流れを掴んでいただけたでしょうか。

第三部にはあまり関係がない部分ではありますけれども仮名手本忠臣蔵でも大変人気の部分ですので、第三部だけご覧になる方もぜひ記憶にとどめておいていただけたらと思います(人'v`*)

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