歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。 歌舞伎歴10年の20代。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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二月をふりかえり… 2018年

早いもので今日で二月もおわり…

今月の歌舞伎の思い出はやはりなんといっても

歌舞伎座夜の部「仮名手本忠臣蔵 七段目」に尽きます!

このような珠玉の芝居をこの目で見ることができたこと、

これはもう何十年も先の自分自身へのたからものです。

 

今回の七段目は

奇数日は仁左衛門さん・玉三郎さんの兄妹

偶数日は海老蔵さん・菊之助さんの兄妹

という配役替えがありました。

 

この奇数・偶数を見比べてみて湧き起ったのは、

白鸚さん、すごい…!という衝撃であります。

 

奇数・偶数の配役で、それぞれに芝居の仕方は異なります。

そんな、いわば毎晩毎晩日替わり状態の芝居に、

25日間ベストな状態で由良之助として舞台の中心に君臨しつづけるというのは、

おそらく並大抵のことではない、

私のような素人にはとても想像できない極限世界であろうと思います。

 

ご自身の襲名披露狂言においてこんなにもハードな仕掛けで

私達観客を心の底から楽しましてくださるという、そのお姿に心から感じ入りました。

ちょうどブログで「松本幸四郎」という名跡について振り返っておりましたので、

あの大名跡を九代目として生き抜かれた方のお姿なんだ…ありがたい、尊い…と

感極まって泣きそうになってしまいました。

 

また、もう一つやはり書かずにはおれないのは

仁左衛門さんの平右衛門、玉三郎さんのおかるの素晴らしさであります。

もう一生私はこのような七段目を見られないんじゃないかしらという悲しみと、

自分の記憶に残せるというしあわせで頭が混乱し、滝のように号泣いたしました…。

感情のコントロールが非常に難しかったです…。

 

あの愛おしげなな雰囲気は、長年のご共演のたまものなのでしょうか。

おかると平右衛門はもちろん男女のそれではなくて、

「この二人は山﨑のあのおうちで小さい頃からとにかく仲良く育ってきたんだろう」

ということが随所で感じられ、

だからこそおかるが勘平の死を知った時の

「わたしゃどうしょぉ」「もっともだ」とその後につづく愁嘆場

便りのないは身の代を、の先がいっそう悲しく…

あまりに感情移入してしまって私も思わず「どうしょお」とすがりつきたいほどで、

とても平常心ではいられませんでした。

 

また、幕切れの場面で仁左衛門さんの平右衛門は、

九太夫をこれから殺そうという眼光鋭い表情ではなくて

キラキラと目を輝かせ希望に満ち溢れた表情を浮かべていましたね。

この表情がもう、なんとも胸に迫りました。

 

それは、最初の方で東のお供を願い出て由良之助に跳ね返された時、

五両三人扶持の足軽でも、繋ぎましたる命はひとつ

ご恩に高下はござりませぬ」と言った、平右衛門の信念がまっすぐに

この晴れやかな表情まで繋がってきたのだなと心底納得できたからです。

 

私は女の浅い心ゆえ、これまで平右衛門のことを

どうにか仇討に加わりたいと一力茶屋に連れてきてもらって

やる気を買われた正義感が強くて人の良い足軽…

くらいの解釈しかできていませんでした。

 

五両三人扶持でも繋いだ命はひとつ。

「ご恩」に高下はない。

なのに、

人に勝れた心底を見せねば数には入られない。

それが小身者の悲しさなんだ。

だからこんなに可愛い、愛する妹だけれど、

その命をくれよ…という

この平右衛門の悲しみがようやく腑に落ちたのです。

 

これまで何度も七段目を見て、七段目が好きなんだと芝居仲間に話しながらも

平右衛門が塩冶判官への「感謝」に動かされていることを感じたことは

一度もありませんでした。

どちらかといえば平右衛門は足軽身分のハングリー精神に動かされていて

上昇志向の強さから仇討に参加したいのだろうと思っていたのです。

 

私はこれまで一体何を見聞きしていたんだろう…と大きく反省するとともに、

仁左衛門さんの平右衛門を改めてじっくりと拝見できなければ

一生このままだったのではないかと、猛烈な感謝の念を抱き

千穐楽の晩は布団でオイオイ泣いてしまいました。

 

義太夫狂言というのは台詞を重ねて物語を展開させていく演劇とは根本的に異なり、

全てがうねるような流れをもって繋がっているんだと改めて思い知らされました。

 

目の前に繰り広げられる仁左衛門さんのお芝居から、

先人が伝えてきた義太夫節の詞章の世界をわかりやすく受け取ることができ、

そこからこんなにもいろいろなことを教えていただけること

またたくさんの歌舞伎役者の方々がおいでのなかで

仁左衛門さんのお芝居を好きになれたために気付くことができたということ

こんなに幸せなことがあるだろうかと泣いておりました…。

 

それにしても、仁左衛門さんの目はどうしてあれほど輝いておいでなのでしょう…

ファンゆえに美化して捉えた意味の「目の輝き」ではなくて、

実際に目そのものが猛烈な水分を持って輝いてらっしゃるのです。

しかも、それを場面によってコントロールなさっているのではと思うのですが。

一体どういう仕組みなのか本当に気になっています…。 

 

 

つい熱くなり長くなってしまいましたし、

とても書ききれそうにありませんので、このあたりで締めくくりたいと思います。

個人的なメモ書きのようなものをお読みいただきありがとうございます。

 

さあ、来月はどんな芝居が待っているのでしょうか。

楽しみに今日は休みたいと思います。おやすみなさいませ。

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