ただいま歌舞伎座で上演中の吉例顔見世大歌舞伎では新芝翫・新橋之助・新福之助・新歌之助の襲名披露狂言として、昼の部で「祝勢揃壽連獅子」を上演中です。
その一では「連獅子」という演目についてお話いたしましたので、そもそも獅子とはなんなのかということをお話したいと思いますのでお付き合いください。
ライオンじゃないなんて
獅子=ライオンというイメージですよね。
歌舞伎役者がぶんぶんと振り回している毛の感じも、ライオンのたてがみに見えないこともありません。
しかし古典芸能において「獅子」は
文殊菩薩に仕える霊獣・獅子のことを指しています。
文殊菩薩の霊地である中国の清涼山。
そこには自然の中でつくられた石の橋「石橋(しゃっきょう)」があり、
獅子はそこで咲き乱れている牡丹の花に舞い遊ぶ
という伝説があるのです。
石橋は深い深い谷底の上にかけられた非常に幅の狭いもので、滑らかな苔が密集しているので滑りやすく容易に渡れるものではありません。
しかしそれを無事に渡り切るとそこには文殊菩薩の浄土があるのだ、と語られています。
谷底には激しい清流が流れており、その岩間には一年中牡丹の花が咲いていて獅子が川辺に戯れているのだといいます。
中国で花といえば百花の王・牡丹。
獅子と牡丹という組み合わせは切っても切れぬものなんですね。
そんな石橋の伝説は古くから、儀式や宗教行事での芸能に多く取り入れられてきました。
これを基にして作られた能「石橋」を模して、歌舞伎でもこの獅子の伝説を取り入れた舞踊がたくさん作られてゆきます。
歌舞伎の一ジャンルに
こうした演目は「石橋物(しゃっきょうもの)」と呼ばれており
- 「連獅子(れんじし)」
- 「春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)」
- 「石橋(しゃっきょう)」
など現在でも頻繁に上演されているものがたくさんあります。
歌舞伎役者のイメージとしてまず浮かぶのは隈取をして長い毛をぶんぶんと振り回している様子ではないかなと思いますので、人気も上演頻度も高くなるのは頷けます。
それでは次回は獅子の精の衣裳などについて、少しお話したいと思います!