ただいま国立劇場で上演中の
通し狂言仮名手本忠臣蔵
今月は第二部として「道行旅路の花聟」、五段目・六段目・七段目が上演されています。
この段での主役はなんといっても有名な
お軽勘平というカップルですね。
先月の第一部でも人物にふれましたので、今月もそんなお話をしてみたいと思います。
今月見逃してしまった方も、仮名手本忠臣蔵のお話はずっと役に立ちますのでこの機会にお聞きいただけたらうれしく思います。
参考までに、先月の人物紹介です。
初めて五、六、七段目から仮名手本忠臣蔵をご覧になる方は、ここまでのざっくりとしたお話もどうぞご参考に…
早野勘平=萱野三平
赤穂浪士の盟約に参加したにも関わらず、仕官を勤める父の間で板挟みになり、ついには切腹してしまった萱野三平重実(かやのさんぺいしげざね)という実在の人物が基になっているのだそうです。
といっても、討ち入りにかなわず自死というところがモデルになっているというだけで、萱野三平が勘平のような人物だったわけではないようですのでご注意ください。
この演目での勘平はなんとなくやつれた悲劇の色男でとても人気があります。
詳しいあらすじはここでは割愛しますが、
・恋人のおかるといちゃいちゃしていて主君の大事に居合わせることができず、
・切腹しようとしたもののおかるに止められ言われるままおかるの実家に転がり込み、
・最終的には舅殺しの疑いをかけられて切腹してしまう・・・
という悲劇的な人です。
しかし疑いは晴れたとて、そもそも道端の遺体からお財布を取って帰ってしまったわけだから結構な人だなぁ・・・
と思ってしまいますが、そんな弱くて情けないところが魅力でもあります。
そんな男性だからこそ「色に耽ったばっかりに」というセリフが涙を絞るのですね。
おかる
おかるのモデルは、大石内蔵助が京都に囲っていた「阿軽(おかる)」という名前のお妾さんだと言われています。
しかしこの方もまた、この演目のおかるのような人物であったというわけではないようですのでご注意ください。
勘平同様、おかるも波乱に満ちた女性です。
・はじめは腰元であったのに
・お金のために身を売り遊女になってまで勘平に尽くすも、
・お父さんと愛する勘平は亡くなってしまい、
・そして仇討ちに加わることになった兄まで失うことになる
という大変悲劇的なヒロインですね。
しかしおかるもまた、お他所の人のラブレターを鏡を使って二階から覗き見るというちょっと驚きの行動に出ています。
父と勘平が亡くなったことを聞かされても、
「お父さんは年齢的にあれだけれども・・・勘平さんがかわいそう」
と言ってしまうようなところもありました。
しかしそれほどまでに人の恋路をうらやましく思い、とにかく勘平との恋愛に燃えている女性なのですね。
その心のまっすぐさが胸に迫るのだろうなぁと思います。
六代目梅幸は「おかるはモダンガール」とおっしゃっていたそうですが、これはまさに言い得て妙な表現です!
そんな二人の物語が展開してゆくのが今回の第二部です。
人間の弱さが描かれ、仮名手本忠臣蔵の中でも現代人の私たちが共感しやすい味わい深い部分だなと思います。