歌舞伎座で上演中の壽 初春大歌舞伎!
昼の部「廓文章」では歌舞伎のお約束のあるデザインが見られますので、
ひとつご紹介したいと思います。
目にも美しい歌舞伎の世界をよりお楽しみいただけたら幸いです!
恋文でできたロマンチックな着物
藤屋伊左衛門と夕霧太夫のラブラブぶりを見守る「吉田屋」こと
廓文章(くるわぶんしょう)
ざっくりとしたお話の内容はこちらをお読みください。
伊左衛門さんは藤屋という豪商の若旦那。
それはそれはとんでもない大金持ちであったわけですが、
あまりの放蕩ぶりに勘当されすっかり落ちぶれてしまいます。
しかし夕霧が病気になったと聞いて、吉田屋へ訪ねてくるのです。
しかし吉田屋の店先では、
「お前のようなみすぼらしい奴が来るところではないぞ!」
と若い衆たちに怒られてしまいました。
一見綺麗な身なりの伊左衛門さんですけれども、
実は「みすぼらしさ」のシンボルのようなものを身につけております。
こちらの浮世絵をご覧ください…
国立国会図書館デジタルコレクション
なにやら文字が見えませんでしょうか?
実はこれは「夕霧からの恋文」という設定。
お金がないのでラブレターをつなぎ合わせて衣にして着ているわけなのです。
松の位の遊女からの恋文、寒々しい勘当の身には心あたたまりそうな着物です。
こういった紙の衣をイメージした衣装を紙衣(かみこ)と呼んで、
歌舞伎の世界では「落ちぶれた」「うらぶれた」「身をやつしている」
といった役どころをあらわすお約束となっています。
紙の着物なんて寒々しい…かわいそうに…というところです。
そんな紙の着物でも、
「紙衣ざわりが荒い、荒い…」とたしなめる伊左衛門さんのせりふは
育ちの良さを伺わせながらもふふふと笑えるものであります。
しかし、実は紙でできた着物というのは、
麻や絹のように風をひゅうひゅうと通さないので実に暖かく、
古くから防寒具として使われてきたのだそうです!
なんと絹よりも高価なものもあったといいます。
歌舞伎の世界ではあくまでもお約束、演出のおもしろさといったところ。
もちろん舞台の上の役者さんは布でできた「紙衣」の衣裳をお召しですよ!
参考文献:歌舞伎の衣裳/新版歌舞伎事典/歌舞伎登場人物事典
- 作者: 服部幸雄;富田鉄之助;廣末保
- 出版社/メーカー: 平凡社
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