歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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歌舞伎のことば:鐘の鳴らし方で危険度を察知「火の見櫓」

先日は、江戸の街のみんなが憧れたヒーロー的存在

町火消」のお話をいたしました。

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先月の歌舞伎座では七之助さんが、櫓のお七の通称でも知られる

伊達娘恋緋鹿子」をお勤めになっていましたね。

この演目でも江戸の火事事情がかなり重要になりますので、

ちょうどよい機会ですからお話してみたいと思います。

 

火の見櫓の鐘と木戸

伊達娘恋緋鹿子は八百屋お七という、

ある事件で江戸で有名になった女性を描いた浄瑠璃であります。

 

八百屋お七事件の通説をざっくりと紹介いたしますと、

お寺の小姓さんに叶わぬ恋をしてしまった八百屋のお七さんという娘さんが、

彼に一目会いたい…という一心から、なんと町に火を放ってしまい、

火あぶりの刑に処されてしまった…!という大変センセーショナルなものです。

 

常軌を逸した恋愛感情で若い女性が放火犯になり死刑に処されてしまうという事件は、

いろいろと尾ひれがついたり作り変えられたりして、

フィクションの世界で大変人気を呼んだというわけです。

 

伊達娘恋緋鹿子」ではこの筋をアレンジして、

いますぐ想い人のもとへ行かねばならないのに町の木戸が閉められている…!

という仕掛けが加えられています。

 

江戸時代の町では地区ごとに木戸が設けられており、

夜になるとしっかり戸締りをするという防犯対策が取られていました。

 

この木戸が開く例外的なタイミングというのがまさしく「火事

木や紙でできた建物がみっちりと並ぶ江戸の町はとても燃えやすいので、

少しでも早く延焼を食い止める必要があります。

 

火事を察知したら火の番が火の見櫓に登って状況をチェックし、

櫓の鐘をジャンジャンと鳴らして「火事だ火事だ」と知らせを出します。

すると大変だ大変だ!!と町火消たちや人々が行動をはじめ、

木戸もガガガと開かれる…というわけなのです。

 

そんな一刻を争う緊急事態を知らせる大切なサイレンですから、

火事でない場合は櫓の鐘を鳴らしてはならない、

もしみだりに鐘を鳴らしたものは厳罰に処すぞという決まりがありました。

 

しかしいますぐ想い人のもとへ行かねばならない!という緊急事態にあるお七は、

「太鼓(鐘)を鳴らせば木戸番が火事だと思い、木戸が開くんじゃないか…?」

という発想に至り、情熱のままにそれを実行してしまうわけなのです。

 

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国立国会図書館デジタルコレクション

 

実はこの火の見櫓の鐘なのですが、

鳴らす回数によって火元からの距離が違ったという説を

学研のサイトで目にしました。

江戸の三火消と消防技術:お江戸の科学

 

一打:ジャーン…ジャーン… →火元は遠い

二打:ジャンジャン…ジャンジャン… →火消は出動せよ

三打:ジャンジャンジャン…ジャンジャンジャン →火元は近い!

鐘の中で乱れうち:ゴンゴングォングォン →火は間近だ!!

変則:ジャーン…ジャンジャーン… →鎮火しました

 …という具合だそうです。

 

 「伊達娘恋緋鹿子」でお七はどんなリズムで太鼓を打っていたか、

次回上演の際にはぜひチェックなさってみてください!

 

参考文献:大江戸まるわかり事典/学研お江戸の科学

大江戸まるわかり事典

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