3月に入りもう10日が過ぎましたが、今もなお新型コロナウイルスの影響で歌舞伎公演の中止期間が続いております。
後の世にこのページをご覧になる方には何のことやらということかもしれませんので少しばかり補足いたしますと、現在2020年3月は「新型コロナウイルス」による疫病が世界的に流行しております。
日本では感染拡大防止対策として、様々な活動に自粛要請。エンターテインメントの世界においては音楽イベントや演劇公演などが軒並み中止となってしまっています。
このすえひろもいくかのチケットが払い戻しとなってしまい、うるおいのない日々を送っております…。まるで生ける屍のようです。。先の楽しみがあるということがいかに幸せなことであったか…幸せと申しますか、もう私の生命そのものであったのだなと実感しております。。
そういった事情から突如生まれた空き時間…
楽しみにして買ったまま手つかずの本や、読んだものの内容をすっかり忘れている本などをもりもりと読み、気力を奮い立たせております。
備忘録を兼ね、そのなかから何冊かご紹介いたしますので、何らかのお役に立てればうれしく思います!
「江戸時代の歌舞伎役者」田口章子著
京都造形芸術大学の田口章子教授が芸術選奨文部大臣新人賞を受賞された書物。発行はおなじみの雄山閣、平成10年初版です。
「300年前の芸能界はこんなに面白かった」との帯で勢いよくジャケ買いし、これは楽しみだじっくり読むぞと思いながら数年が経過してしまった一冊でありました。
内容をざっくりとご紹介しますと
序章:初代仲蔵の一生
第一章:役者の仕事(給金・出世・修行など)
第二章:役者の人間関係(師弟・ライバル・女性関係など)
第三章:衣食住・趣味(衣装や食事、俳諧など)
といった具合で江戸時代の歌舞伎役者の仕事とプライベートが網羅されており、出典の記載もありつつスキャンダラスという理想的な一冊。江戸時代の歌舞伎役者の苦労や、それに負けまいと這いあがる気骨に胸が熱くなります。
特に興味深くてたまらなかったのは、四代目松本幸四郎の策士ぶりと嫌われぶりです。
おもしろかったのは、
天明4年に大坂へ上った際もめていた初代尾上菊五郎のひいき連中から船乗り込みの船にガレキと糞尿を投げ込まれる、
角の芝居の尾上丑之助から「中の芝居へはこわいおじさま(四代目幸四郎)がいらっしゃるというので逃げてきました」と口上される、
しかもそれはおおむね四代目幸四郎が悪いと思われる…
というエピソード。
現代であれば大変なさわぎになってしまう衝撃の嫌がらせです…!本当にぶっ飛んでいますね江戸時代の方々は…
しかし四代目幸四郎はこんなことがあってもかばいきれないような人物であったようであり、息子の五代目幸四郎も父親を許せなかったというのですから相当です。
とはいえ役者として出世していたということは四代目幸四郎なりに人間関係の荒波を懸命に越えてきたのであり、なんだか興味が尽きません。
このほかにも様々な役者たちの衝撃エピソードがわんさか紹介されています。
参考文献は非常に細かく、なおかつジャンルごとに掲載されていてとても便利です。
見ているだけでワクワクと心躍ります。参考文献のなかの岡本綺堂「ランプの下にて」などは青空文庫でも読めますので、こちらもぜひチェックなさってみてください。
すえひろは単行本を所有しているのですが、文庫版も出ているようです!
単行本は通常の単行本サイズより若干大きいので、文庫版の方が取り扱いやすいかもしれませんね。