歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい日本振袖始 その五 ざっくりとしたあらすじ①

ただいま東京は歌舞伎座で開催中の十二月大歌舞伎

第四部で上演されている「日本振袖始(にほんふりそではじめ)

日本神話のヒーローとヤマタノオロチの対決を描いた歌舞伎らしい舞踊劇で、今月は玉三郎さんと菊之助さんがご共演になり、劇場もにぎわっているのではないかなと思われます!

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ひとまず過去にお話したものをまとめましたが、肝心の演目の内容についてはお話が手薄であったことがわかりました。舞踊劇ですからものすごく複雑なドラマが展開するというわけではないのですが、物語の前提や内容をお話してみます。上演時の条件によっていろいろ変更されたりすることもありますので、その点は何卒ご容赦願います。

岩長姫は何者か

日本振袖始(にほんふりそではじめ)は1718年(享保3)2月に、大坂は竹本座で初演された時代物の人形浄瑠璃です。日本書紀や古事記に登場するヤマタノオロチとスサノオノミコトの伝説をもとにしたもので、作者はあの近松門左衛門であります。

 

元々の演目は全五段にわたる時代物浄瑠璃でしたが、その後しばらく上演が絶えていたようです。1971年(昭和46)に六台歌右衛門が五段目を義太夫節の歌舞伎舞踊として復活させ、平成10年に玉三郎さんが新たな振付で上演したことで今のような人気演目になったという経緯があります。複雑な人間のこころ模様を描き出した近松が、唯一日本神話を題材にしたものということもあり、あまり定番化しなかったのでしょうか。

 

大まかな流れとしてはお姫様が危うく恐ろしいヤマタノオロチのいけにえになってしまうところをスサノオノミコトがかっこよくやっつけるというものです。流れはシンプルですが、そもそもどういう状況にあるのかはわかりにくいかもしれません。

神話の話ですから、一般的にはそう伝わっているよということを前提にお読みください。

 

時ははるか昔、神々が世を治めていたという時代、天照大神のお孫さんの瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)なる方が帝位についたころのお話です。

ニニギノミコトはアマテラスオオミカミの命によって高天原から日向の高千穂峰に天降ったとされ、美しい木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)を見初めて妻とし、3人の子を生ませたとされています。

 

実は咲耶姫には、岩長姫(いわながひめ)という姉がいました。岩長姫と咲耶姫ともにニニギノミコトに献上されたにもかかわらず、ニニギノミコトが岩長姫の方には目もくれなかったために、強烈な嫉妬の念に駆られてしまいます。

日本神話における岩長姫というのはつまり、岩のようにごつごつとして硬く、長い命と執念を持ち続ける女…というような存在であるようです。

 

そんな岩長姫はどうにかして咲耶姫を殺してやろうと思い、大内へ乗り込んでいったものの失敗してしまいます。そこで、咲耶姫に恋している素戔嗚尊(スサノオノミコト)をだまし、十握の宝剣を奪い取ってどこかへ行ってしまいました。

さらに岩長姫は八つの頭をもつおそろしき大蛇・八岐大蛇(ヤマタノオロチ)であったということも明らかになり、スサノオは十握の宝剣を奪い返すための旅に出たのでした。

 

スサノオが探す十握の宝剣は十束剣 (とつかのつるぎ)十拳の剣(とつかのつるぎ)などとも呼ばれるもので、草薙剣(くさなぎのつるぎ)天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)との別名もある三種の神器のひとつです。

ちょうど昨年改元にともなう儀式に用いられ、ものすごく厳重に運ばるようすがニュースで放送されていましたね!国にとってあんなにも重要らしい品物が、ででーんとあからさまに登場するお芝居というのは確かにあまり見たことがありませんので、おもしろいものだなあと思います。

 

さて、ここからようやく舞台の上のお話に移ります。長くなりましたので次回に続きます!

参考文献:日本大百科全書/朝日日本歴史人物事典

 

公演の詳細 

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