近々東京でもかなりの雪が降る見込みのようですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
このすえひろはといえば、遠い駅でひとり40度超の高熱を出して帰るに帰れなくなるという夢を見て、ハラハラいたしました。夢で本当に良かったです。正夢にならぬよう体調管理には充分気を付けてまいります。
さて先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして二月大歌舞伎の第二部を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。
目に知盛の残像が
第二部は「春調娘七種」「義経千本桜 渡海屋 大物浦」の二本立てです。
「春調娘七種」は、曽我兄弟と静御前による歌舞伎の人気キャラクター大集合といったような舞踊。曽我十郎に梅枝さん、曽我五郎に萬太郎さん、静御前に千之助さんという配役です。この後に続く壮絶な一幕の前に、ゆかりの若い世代の方が儀式のように粛々と舞台を清めているかのような味わいでした。
続く「義経千本桜 渡海屋 大物浦」は、仁左衛門さん一世一代の舞台とあって、劇場へ出かける前からもう気持ちが引き締まっていて、独特の緊張感のなかで堪能しました。すさまじかったです…。とにかく。もう表現のしようがないほどにすさまじかったです。
仁左衛門さんの知盛はあまりにも高貴で、どうしても出陣の際に「どうかこの人の望みが叶いますように」と心から願ってしまいます。その先の運命はもうわかっているのに、いつも心からそう思います。それだけに怨霊のようになったすさまじい知盛の姿、運命を受け入れた最期の悲しさに胸をえぐられるようです。
ご本人が芸談でこだわっているとおっしゃっていた「心地よやなあ」のセリフの後、知盛ははははとしばし笑うのですが、ふと下を向いた一瞬に、見たこともないようなこの上なく悲しい表情が見えて、言葉では表現できないような人の運命の切なさを感じて、平家物語の世界へ思いを馳せ、涙が止まらなくなりました。
夜になっても目に知盛の残像が残っていて、少し寝つきにも影響しました。それほどにすさまじい体験でした…。情けないほど言葉にできないのですが、第二部は何度か拝見する予定ですので、また折を見て感想を残したいと思います。
余談ですが、近ごろ流行りの立体構造タイプのマスクをして拝見してみたところ、飛び出している板の部分に涙がタプタプと貯まってしまって、素材が固めなため涙が沁み込みもせず慌てました。替えを持っていてよかったです。お気をつけくださいませ。