歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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十三代目 市川團十郎白猿襲名披露 八代目 市川新之助初舞台 吉例顔見世大歌舞伎 昼の部を見てきました!2022年

再び新型コロナウイルスの感染が広がっているようですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。歌舞伎座にはおおぜいの役者さんが御出演で、客席も連日大入りですので心配しています。せっかくの襲名披露、無事に千穐楽まで上演が続きますようにと祈っております。

このすえひろはといえば、ようやく4回目のワクチンの日取りを決めたところです。副反応が出やすい体質のようで毎度苦しんでおりまして、もう打つのはよしたいと思っておりましたが、なにやかにやで打つことと相なりました。今度こそ副反応がおだやかだと良いのですが。

さて、先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして十三代目 市川團十郎白猿襲名披露 八代目 市川新之助初舞台 吉例顔見世大歌舞伎の昼の部を拝見してまいりました!備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。

また当代の名跡のうち「白猿」という部分についてはちょっとどのように使われるのかメディアによってまだまちまちのようですので、このブログでは團十郎と表記いたします。何卒ご了承くださいませ。

勧進帳の感慨

團十郎という大名跡の襲名披露興行!コロナ禍で2年間延期となり、ようやく開幕いたしました。大向こうの声も戻り、このようにうれしいことはございません。

ふだん浮世絵の中に見ている團十郎の代々、それぞれの濃い人生。自分の時代の團十郎さんがここに生まれたのだと思うと、何はさておき高揚感が押さえられません。様々な捉え方がありますが、このような時代の転換点に歌舞伎ファンでいられたことを私自身は素直に喜んでおります。

 

昼の部は「祝成田櫓賑」「歌舞伎十八番の内 外郎売」「歌舞伎十八番の内 勧進帳」という狂言立てでした。

祝成田櫓賑」は、こういったおめでたい興行でよく上演される芝居小屋の前のにぎわいを描く一幕です。今回は成田屋の襲名披露ということで、成田山の場面と芝居小屋の場面の2場面という趣向。梅玉さんの鳶頭と時蔵さんの芸者のカップルを中心に、おおぜいの役者さんたちが次々に登場しては、江戸の風情を体現し続けていました。

あまりにも目が忙しく、あれよあれよという間に幕となってしまったのですが、中でも鷹之資さんがあまりに素晴らしく、目を奪われました。その際立ちぶりといえば、獅子舞の脚だけでも鷹之資さんだと判別できたほどです。天性の才はもちろんのこと、日々地道に努力と鍛錬を重ねていらっしゃるのだろうなと胸が熱くなりました。今後も楽しみに拝見いたします。

また、寿猿さんが軽快に走っていらした姿も、残像として心に残っています。同行した家族にご年齢を話しますと、目を丸くして驚いていました。実年齢を知っていても信じられないのですから、知らずに見ればそれは度肝を抜かれることと思います。今後も末永くお元気な姿を拝見したいです。

 

続く「歌舞伎十八番の内 外郎売」は、新之助さんの初舞台として上演されている演目です。工藤祐経に菊五郎さん、小林朝比奈に左團次さん、舞鶴に雀右衛門さん、大磯の虎に魁春さん、化粧坂少将に孝太郎さんという大変豪華なお顔触れが揃っています。

そんな豪華な初舞台という場面において、新之助さんお見事でありました。メディアでよく取り上げられている「言い立てが上手」という域はとうに超えていらして、五郎の姿になってからの足の指がぴりりと上がったようすであったり、大先輩の前で劇場中の視線を一身に集めてもなおひるまぬ風格に圧倒されました。

またところどころ十二代を思い出すような独特の抑揚があり、それも懐かしくてたまりませんでした。日ごろおじいさまの映像をたくさんご覧になっているのだろうかと想像し。

どうかこのまま様々な家の方々とともに、古典演目の舞台にたくさん立っていただきたいものです。特に丑之助さんとのご共演を心待ちにしています。子役の方々は希望のかたまりのようです。おもしろい時代に立ち会うことができるのではと本当に楽しみです。

菊五郎さんによるあたたかな眼差しと劇中口上。「親はなくとも子は育つ」というセリフが感慨深く胸に沁み入り、じんわりと目頭が熱くなった次第です。私などよりももっとこのお姿を見たかったお二人がいらっしゃると思うとたまりませんでした。

 

そして「歌舞伎十八番の内 勧進帳」は、團十郎さんの襲名狂言として上演されている演目です。團十郎さんの弁慶に幸四郎さんの富樫、猿之助さんの義経という同世代の配役でした。先日の特別公演の配役とは趣向がガラリと変わりましたが、サスペンス性はより際立ったように感じました。

味わいが日によって違うことは大いに考えられますが、私が拝見した日の私の感じ方では、本当に素晴らしい、良い勧進帳でした。幸四郎さんの高らかな声と清潔感、決まった形から微動だにせずに光を放つ猿之助さん、そして團十郎さんの堂々たる弁慶。お声の低音域も非常によく広がっていて、これまでの舞台から考えますと、非常にスタンダードな弁慶を見ることができました。それが良いです。本当にうれしかったです…。

 

想定外に感慨と喜びが大きく、私は長らくこういった舞台を待ちわびていたんだなと思いました。同世代の方々とそれぞれに芸を磨き合い、そのなかで存在感を放って輝くようすが見たかったのです。

ここ10年ほどのうちに失われてしまったもの、見られなくなった舞台の味わいは数えきれないほどありますが、この世代の勧進帳が深待っていくところを拝見できるのかと思うと、それはそれで大きなしあわせだと感じます。

どうかこのまま歌舞伎座の舞台で、同世代の方々とともに、時代物も含めた様々な演目に取り組んでくださいますようにと切に願っております。

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