ただいま歌舞伎座で上演中の三月大歌舞伎
第二部「仮名手本忠臣蔵 十段目 天川屋義平内の場」は大人気作・仮名手本忠臣蔵の中でも比較的上演頻度の低い場面でして、この場面のみが上演されるというのもなかなか珍しいです。私自身も見たことがあるようなないような…と思っておりましたが、調べたところ7年ほど前の国立劇場での上演の際に拝見していたようです。結構な年月が経っていますね。
それほど少ない機会ですので、演目について少しばかりお話したいと思います。芝居見物や配信の際などのお役に立てれば幸いです。
仮名手本忠臣蔵のおさらい
天川屋義平が登場するのは全十一段におよぶ仮名手本忠臣蔵の十段目。
限りなくラストに近い場面です。前提情報が必要かと思いますので、仮名手本忠臣蔵とは一体なんなのかについてはこちらでお話しています。
あらすじ 全体の流れ
国立国会図書館デジタルコレクション
せっかくの機会であり、これを逃すと次がいつになるか知れませんので、仮名手本忠臣蔵 十段目 天川屋義平の場のあらすじについてもお話しておきたいと思います。
まずは全体の流れをご紹介し、そのあと追って詳細をお話してまいります。九段分の物語を飛ばしているわけですから何のことやらという点も多々あるかと思いますが、とにかく「塩冶家浪人が高師直を討つ計画は、誰にも知られてはならない秘密」ということを前提に、内容を追っていきましょう。
①
廻船問屋「天川屋」の主人・義平は、最近どういうわけか従業員たちを次々に解雇にし、妻まで実家に帰してしまっている。さらには義父に離縁状まで渡してしまった。義父はお園を他家へ嫁がせようと画策している。
②
突如、天川屋に捕手が乗り込んでくる。大星由良之助に武具を提供した疑いがかけられているのだ。捕手は義平の幼い息子・由松を人質に取って脅すが、それでも義平は決して口を割ろうとはしない。
③
すると、現れたのは大星由良之助。由良之助は義平を試すため、塩冶家浪士たちを捕手と偽り、天川屋に乗り込ませたのであった。そこへ、離縁状を出され悲しみに暮れるお園が戻ってくる。義平に冷たく突き放されたお園は、何者かによってそのまま連れ去られ、髪を切り落とされてしまう。
④
お園の髪と離縁状が、由良之助から義平へのお礼として渡される。これは、お園を尼にして他家へ嫁がせないための計らいであった。ここまでの義平の厚情に報いるため、討ち入りの合言葉が「天」「川」に決まる。
参考文献：新版歌舞伎事典・歌舞伎登場人物事典・国立劇場上演台本
