歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい寺子屋 その2 12月5日によせて

昨日12月5日は勘三郎さんの4回目の命日でしたね。

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勘三郎さんはおそらく歌舞伎をご覧になったことのない方の間でも大変有名で人気のある歌舞伎役者であったはずですので、そんな勘三郎さんへの思い入れを持って勘九郎さんのご活躍をご覧になっている方も津々浦々大勢おいでではないかと思います。

4年という年月の速さに驚きながらも、4年前と今とではまるで別世界に来てしまったようで、なんとも遠くに感じられます。

 

ちょうど今日放送のフジテレビ「ノンストップ!」で、勘九郎さんが勘三郎さんへの思いや今月上演中の「寺子屋」に対する思いについて語っておいでだったのです。

寺子屋のまとめの途中でしたので、せっかくですから今日はそのお話をしたいと思います。見逃してしまった方のお役に立てればうれしく思います(人'v`*)

 

寺子屋」はどうにもならない悲劇の多い歌舞伎の演目の中でもとりわけ深い悲しみに満ちた、屈指の名場面です。

本当に簡単に言うと、松王丸という男が恩義のある菅丞相の子・菅秀才の命を守るため、我が子を身代わりにしてその首を討たせるという物語であります。

 

中村屋には勘九郎さんのおじいさまである十七代勘三郎から伝わる松王丸の型があり、勘九郎さんのお父様・十八代も何度も何度もお勤めになり当たり役として大切にされてきました。

しかし勘九郎さんご自身はまだお若かったこともあってか、勘三郎さんから直に習うことがついに叶わなかったということです。

 

松王丸は子供時代からの憧れであったそうで、今月の上演が決まった際には大変嬉しく思いすぐに仏壇に報告なさったとのことでしたが、

勘九郎さんの芝居に対して一番身近でダメ出しをしてくれるはずの勘三郎さんがいないということには不安もお持ちのようでした。

「言われているうちが華です。”役者殺すにゃ刃物はいらぬ”という言葉は本当で、褒められていれば(芸が)死んでしまう」(※意訳)という言葉に、芸に向き合う厳しい姿勢を感じました。

 

今回の上演にあたっては、十七代・十八代の松王丸の映像を何度も何度も繰り返しご覧になって中村屋の型を習得されたのだそうです。

しかし映像だけでは絶対にわからない、肚の芝居があります。どういった気持ちで演じているのかが芝居には如実に出てきてしまいます。

そんな部分は、お弟子さんが事細かに覚えていらしたため、質問しながら中村屋の松王丸を作り上げていったのだそうです。お弟子さんの生涯をかけた芸の道もこうして昇華されてゆくのだと思うと、命がけで伝承されてゆく芸の尊さを感じます。

 

勘九郎さん自身もお父様となられ、松王丸の首実検の場面ではどうしてもお子様の顔が浮かんでしまうとのこと。”そういった思いをぐっと抑える作業も必要なのだ"という、新たな発見があったそうです。

勘九郎さんは歌舞伎の伝統を伝言ゲームに例え、

「寂しいですけれど彼らの中に父の魂が宿っている。先輩や父から習ったことを覚えていて、100%は伝えられないかもしれないけれど、伝えていかなければ崩れていく。伝えることが使命です」(※意訳)

という言葉でインタビューを締めくくられました。

 

インタビュー内ではちょうど今月の映像が流れていましたが、銀鼠色の地の松王丸の衣裳をお召しになった勘九郎さんの姿を見てなんとも感慨深く思いました。

勘九郎さんの言葉は本当に一つ一つが誠実で気持ちが良く、ずっとずっとご活躍を応援してゆきたくなります。

六代目中村勘九郎写真集

そんな今月の「寺子屋

一幕見席のタイムテーブルはこちらにまとめてありますので、ぜひ一度お出かけください(人'v`*)

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