ただいま歌舞伎座では秀山祭九月大歌舞伎を上演中です。
初代吉右衛門の芸を顕彰することを目的とした「秀山祭」
今年は、当代吉右衛門さんが昼の部で極付幡随長兵衛をお勤めになっています!
そんな極付幡随長兵衛について、少しばかりお話いたします。
なんらかのお役に立てればうれしく思います。
河竹黙阿弥作、世話物の名作!
極付幡随長兵衛(きわめつきばんずいちょうべえ)は
名作者として知られる河竹黙阿弥の作品。
明治14年(1881年)、東京は春木座で初演された演目であります。
江戸ではなく明治時代の作品なんですね。
初演では幡随長兵衛を「劇聖」と謳われた名優・九代目團十郎が勤めています。
この演目は江戸時代に実際に起こった事件を基にしているのですが、
九代目團十郎という方は激動の明治において
庶民の娯楽だった歌舞伎を高尚な芸術にしよう!
でたらめで荒唐無稽な芝居ではなくて、史実に基づいた芝居を作ろう!
という確固たるポリシーを持っていた人物でした。
そのため、この極付幡随長兵衛も実際の事件にかなり忠実に描かれているのだそうです。
そのわりに劇中劇があったりしてなかなか愉快な演出で上演されていますよね!
実はあの劇中劇の部分「村山座けんかの場」は、
初演の後の明治24年(1991年)黙阿弥の弟子であった三代目河竹新七が書き加えたものなのだそうです。
以降その趣向が好評を呼んで、現在にいたるまで同じスタイルで上演されています。
実在の侠客幡随院長兵衛は、江戸の庶民にとってのヒーロー的存在!
この演目のほかにも数々の芝居や講談の題材となり、時代が下ると映画やテレビなどにも登場しています。
そんな数々の幡随院長兵衛のおはなしの中でも決定版であるという意味で、
「極付」とタイトルに付けてあるわけです。
「御存知」や「極付」などをわざわざ題名の頭に持ってくるという発想、
昔の人の考えることはなんだかやっぱりおもしろいですね。