ただいま歌舞伎座で上演中の
團菊祭五月大歌舞伎
十二世市川團十郎五年祭
十二代團十郎さんがこの世を去られてから五年の追善として
ご子息の海老蔵さんが当たり役をお勤めになり
團十郎さんらしく明るく華やかな興行となっています!
明治時代の名優・九代目市川團十郎と五代目尾上菊五郎の
功績をたたえる興行である團菊祭。
江戸の風情を描き出す生世話物を得意とした五代目尾上菊五郎の出世芸となった、
夜の部「弁天娘女男白浪」にまつわるお話をしたいと思います。
芝居見物のたのしみのお役に立てればうれしいです。
歌舞伎屈指の名台詞
弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)は、
おもしろさや美しさに満ちあふれた歌舞伎屈指の名狂言。
歌舞伎をご覧になったことのない方の間でも非常に有名ですが
忘れてはならないのは名セリフです!
うっとりするほど美しい振り袖姿のお嬢様をよそおい
呉服屋さんにゆすりかたりに入ったどろぼう青年・弁天小僧菊之助が
男であるとバレてしまい、居直って突如男っぽくすごむ場面での
「知らざあ言って聞かせやしょう…」というセリフであります。
作者・河竹黙阿弥の特徴である
七五調のセリフは非常に小気味よく思わず声に出したくなりますので
ここに全文を記してみます。ぜひ音読してお楽しみください!
知らざあ言って聞かせやしょう
浜の真砂と五右衛門が
歌に残した盗人の
種は尽きねぇ七里が浜
その白浪の夜働き
以前を言やァ江の島で
年季勤めの稚児ヶ渕
百味で散らす蒔銭を
当に小皿の一文子
百が二百と賽銭の
くすね銭せえだんだんに
悪事はのぼる上の宮
岩本院で講中の
枕さがしも度重なり
お手長講と札附きに
とうとう島を追い出され
それから若衆の美人局
ここやかしこの寺島で
小耳に聞いた音羽屋の
似ぬ声色で小ゆすりかたり
名さえ由縁(ゆかり)の弁天小僧
菊之助たァおれがことだ
(※様々な要因により言葉は多少異なる場合があります)
文字を入力しているだけでも心がおどり
ぎゃー!と興奮してまいります。
なんと、この弁天小僧菊之助の名セリフが書かれた絵本があるそうです!
ご家庭の教育方針はいろいろですから
子供にこんないかがわしいどろぼうの名乗りをさせるのはちょっと・・・と
思われる方もおいでかもしれず、プレゼントには憚られますが、
もし自分にこどもがいたら読み聞かせたいなあ、
柔らかい頭で丸暗記して披露してもらいたいなあと思います(n´v`n)
こうした芝居の名セリフも
かつてはどんな人でも知っているいわば常識であって
忘年会や宴会の席などで披露されていたそうですよ。
そのような楽しみが失われていくことを思うとなんだか切なくなります。
少しでも覚えて、繋いでいきたいです(´▽`)
参考:歌舞伎の名セリフ/歌舞伎美人/にほんごであそぼ