今日は2月3日、つい先日までお正月気分に浮かれておりましたが、
早くも節分と相成りました!
成田山新勝寺では例年の通り海老蔵さんが豆まきをなさったとのこと、
スター大集合の豆まきを一目見んと大変な人出であったようであります。
また、歌舞伎座ではご出演の方々が
浅草寺では「金栗さん」こと勘九郎さんがお出ましになったようです!
御厄払いましょう、厄落とし
歌舞伎の演目にはそんな節分の夜を舞台にした大人気のお芝居がありますね。
「三人吉三廓初買(三人吉三巴白浪)」
三人吉三(さんにんきちさ)という通称でよく知られています。
美しい女装男子お嬢吉三
おちぶれ御曹司お坊吉三
親分肌の元僧侶和尚吉三
という三人の盗賊の運命が複雑に絡み合う物語であります。
特に上演の機会が多い場面は、
三人が節分の夜に運命的に出会うという「大川端庚申塚の場」
ごく短い場面ながら単独で上演されることも多く、とてもよく知られています。
この演目の魅力と言えばやはり歌舞伎屈指の名セリフ。
おとせという夜鷹の娘から百両という大金を奪ったお嬢吉三が、
美しい女装姿ながら男の正体を現して朗々とかたるものです。
月も朧に白魚の篝も霞む春の空、
冷てえ風も微酔(ほろよい)に心持よくうかうかと浮かれ烏のただ一羽
ねぐらへ帰る川端で棹の雫か濡手で粟
思いがけなく手に入(い)る百両
<厄払いの声>
\御厄(おんやく)払いましょか、厄落し/
ほんに今夜は節分か
西の海より川の中 落ちた夜鷹は厄落し
豆沢山(まめだくさん)に一文の銭と違って金包み
こいつぁ春から縁起がいいわぇ
…と、このようなセリフなのですが、
<厄払いの声>という部分がやや謎めいていますね。
芝居の中ではどこからともなく聞こえてくる街中の音といった雰囲気です。
そもそもこの厄払いとは何なのか少し調べてみました。
近世の日本には人のおうちの門口にやってきて芸を見せることで、
金品をもらい受ける「門付け(かどづけ)」という芸能があったそうであります。
時節になると門ごとに神様が訪れるという昔からの民族信仰にちなんだもので、
今でいう大道芸やストリートパフォーマンスに
お守りや御利益的な要素が加わったようなものでしょうか。
「厄払い」というのはそのような門付け芸の一種であり、
披露する方々の事を「厄払いさん」などと呼んでいたそうです。
厄払いさんは節分や大晦日の夜などに現れて
「御厄払いましょか 厄落とし」などとアピールしながら街を歩いては、
門口などに立って厄払いの祝言を唱えてくれます。
祝詞は「あーら、めでたいな、めでたいな」という景気の良い言葉からはじまり、
「末は西の海とは思えども、この厄払いが引っとらえ、東の川へサラリ」
と結ばれたそうで、なにやらスッキリした気持ちになれそうなものですね。
厄払いさんの身の上としては
物乞いの方や身分制度における下の方の地位に生きていた方も多かったそうで、
厄払いをしてもらった人々は厄払いさんへのお礼としてお豆やちょっとした金銭を渡したとのこと。
ままならぬ世の中、声が聞こえてきたしとりあえずちょっと厄でも払ってもらおうかな…という
当時の人々の気持ちがなんとなくわかるように思います。
そんな厄払いさんのようすが垣間見れる「三人吉三」は
初めての歌舞伎としてとてもおすすめの演目です!
ぜひ上演の機会の際はご覧になってみてくださいね。
参考文献:日本大百科全書/国立国会図書館/俳句十二か月/歌舞伎の名セリフ