ただいま歌舞伎座で上演されている
三月大歌舞伎!
夜の部「盛綱陣屋」は数ある演目の中でも名作として知られていますので、
この機会に少しばかりお話したいと思います。
芝居見物の楽しみのお役に立てれば幸いです!
盛綱、じつは信幸
盛綱陣屋(もりつなじんや)は正式な題名を
近江源氏先陣館(おうみげんじせんじんやかた)といって、
1769年(明和6年)の12月に大坂は竹本座で初演された人形浄瑠璃の演目です。
歌舞伎ではその翌年の1770年(明和6年)5月に、同じく大坂にて初演されています。
実際には全九段にもなる大変長い演目なのですが、
その八段目にあたる「盛綱陣屋」の場面が人気で繰り返し上演され今に至ります。
近松半二を中心としたたくさんの作者によって書かれたお芝居です。
近松門左衛門の時代以降、浄瑠璃が描き出す世界はどんどん複雑になり、
どんどん壮大なストーリーが描かれるようになります。
そんな大きなお話を描くために「合作」というシステムがよく用いられています。
中心人物となる立作者がお芝居全体のアイディアや構成をとりまとめ、
集まったメンバーたちがそれぞれに場面を分担して執筆。
そして立作者が加筆して、ようやくひとつの芝居が完成したのだそうです。
この芝居はたしかに非常に複雑かつ壮大なストーリーで、
芝居の設定は鎌倉時代でありながら実は大坂の陣を描いたものであり
佐々木盛綱・高綱兄弟は真田信幸・幸村兄弟を、
北条時政は徳川家康をモデルとしています。
こうした大坂の陣をもとにした作品群は
「大坂軍記物」「難波戦記物」などと呼ばれており、
近江源氏先陣館はその代表作とされています。
このすえひろは恥ずかしながら日本史にはまったくもって疎いのですが、
大河ドラマ「真田丸」をご覧になっていた方などきっと、
あれがあれでこれがこういうことか~と納得しながら楽しめることと思います!
参考文献:新版歌舞伎事典/日本大百科全書/世界大百科事典