本日28日は歌舞伎座で上演されていた三月大歌舞伎の千穐楽でしたね!おめでとうございます!
(写真は過去のものです)
「馬鹿め!」
今月は仁左衛門さんが公演中に体調不良で休演なさるという非常に心配な出来事があり、気が気ではありませんでしたが、無事にご復帰となり、千穐楽までそのままお勤めになられたことに心から安堵しております…。今月最初から休演なさっていた團蔵さんのお加減も気になります。どうかご無事でまたお元気なお姿を拝見したいです。
今日の千穐楽は拝見できませんでしたが、実は先週の金曜日と昨日の第二部を拝見してまいりました。金曜日は引っ込み以外で花道を使わない演出であったのが、昨日は引っ込み以外も花道ありの演出に戻っていて、お加減が良いのかなととてもうれしくなりました。
私のような素人の目からは、河内山のような役は自然体で歩いているように見えるのですけれども、ああして花道をカッコよく颯爽と歩くのは相当に体力と神経を使うものなのだなあと認識させられ、役者さんへの尊敬の念が深まりました。履物の音や衣装の香りにいたるまで、徹底して練り上げられたものなのでしょうね。客席でなんと贅沢な時間を過ごしているのだろうと思います。
今月つくづく思ったのは河内山ってこんなにおもしろい芝居だったのだなあということです。これまでの自分は咀嚼が足りていなかったことを思い知らされました。
上州屋で後家のおまきさんの話を聞いている仁左衛門さんの河内山は、松江候がお藤を妾にしたがっている…というところまでは仕方がないなぁというようにややニヤついているのに、「一間の内に押し込められ…」というあたりで表情がスッと変わり、これは許してはならない、どうにかして助けてやらねばならないという感情の変化がありありとわかるのですよね。
この一瞬の表情の変化があるからこそ、あのしびれるような「馬鹿め!…ムハハハハハハハハハ」が痛快で痛快で、たまらないものがありました。仁左衛門さんのセリフですと、良い意味で七五調を聞き流せないと申しますか、一つ一つのフレーズが河内山の言葉としてしっかり入ってきて、人物像がありありと見えてきます。もしかしてインタビュー等で「そのままではただの七五調になってしまう」とおっしゃっていたのはこのことなのかなと、目からうろこが落ちるようでした。
仁左衛門さんが素敵なのはもちろんのこと、そのお芝居に触れたことで、またひとつ大好きな芝居が増えるのがとにかくしあわせです。仁左衛門さんは来月もご出演ですから、どうかご無理のないようにと祈るばかりです。こうしたしあわせと発見の日々が、いつまでも末永く続いてほしいと願っています。
今回代役をお勤めになった歌六さんの河内山は一日しか拝見できませんでしたが、底知れぬ恐ろしさを感じる興味深いものでした。近く本役で拝見できる日を夢見ております。
また今月は「芝浜革財布」も最高でしたね…!二部の贅沢さが異常で至福でした…。おたつさんに泣かれてしまった菊五郎さんの政さん、失礼ながら抱きしめたくなるような愛らしさで、完全に時蔵さんのおたつさんに感情移入していました。菊五郎さんと時蔵さんの夫婦もたまらない贅沢ですね…。何度も同じようなことを申してしまいますが、歌舞伎役者の方々いつまでもお健やかに、末永くご活躍いただきたいと願っています。