歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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歌舞伎座 六月大歌舞伎 第一部「菅原伝授手習鑑 車引」「猪八戒」を見てきました!2022年6月

これから数日は気温がぐっと下がるようですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。このような陽気は体調を崩しやすくなりますので何卒お気をつけくださいませ。

このすえひろはといえば、天候が良くない日には休演中の仁左衛門さんのお加減が気になってしまいます。いや、晴れていても気がかり、暑くても気がかりで、思わない日はありません。一日も早く快方に向かいますように、どうか来月もご無理なさいませんようにと願う日々です。

さて、先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして六月大歌舞伎の第一部を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。

異次元の世界にワクワク

第一部は「菅原伝授手習鑑 車引」「猪八戒」という狂言立てです。

菅原伝授手習鑑 車引」は、くまどりの華々しい登場人物たちが派手にポーズを決めるという歌舞伎らしさに溢れた様式的な名場面です。主な配役は、松緑さんの松王丸、巳之助さんの梅王丸、壱太郎さんの桜丸に、猿之助さんの藤原時平というものでした。なんだか随分とお若い配役に感じてしまい、飛ぶように時が流れていることを再認識した次第です。

梅王丸と桜丸の対比が味わい深かったですね。はつらつとして今後のご活躍が楽しみになりました。また猿之助さんの時平が本当に邪悪で邪悪で、これは大変だと思わされました。時平からベロベローと邪気が発され、梅王丸と桜丸の身がすくんでしまってビリビリビリ~となるという演出、あまりにもぶっ飛びが過ぎていて改めて唸らされました。こうした誇張表現も、マンガやアニメのルーツと言えるのではないかなあと思います。

 

猪八戒」は、西遊記でお馴染みの面々が霊感大王を名乗る妖しきものをやっつけるという明快な舞踊劇。主な配役は、猿之助さんの猪八戒、猿弥さんの霊感大王、右近さんの孫悟空、青虎さんの沙悟浄というものでした。

笑いあり、スピーディーな立ち回りあり、おもしろさがお祭りのように連発される楽しい演目でワクワクしました!なんと歌舞伎座の本興行では初演以来95年ぶりの上演ということ。

長らく上演が絶えていた演目を見ると、人気がなかった理由がなんとなくわかったりすることもありますが、この演目はなぜにそれほど長く上演されなかったのかよくわかりませんでした。何らかの事情があったのでしょうか。また近く拝見できるといいなあと思います。

後半に笑三郎さんと笑也さんが京劇の女性役のような出で立ちでお出ましになったのですが、お二人とも息を飲むほどお綺麗でした…。陳凱歌監督の有名な映画「さらば、わが愛 覇王別姫」のワンシーンのようでした。性を超越し、芸の道に全てを捧げる二人の男性の生涯を描いたもので、歌舞伎にも通ずる題材ですので、こちらもぜひにとおすすめいたします。

それはさておき、西遊記という題材はおもしろいですね。非現実的で魅力的でキャラクターたちが遥かなる目的のために旅をするという設定に、夢とロマンを感じます。子供ころからなんだか妙に西遊記が好きで、心惹かれてしまいます。孫悟空といえば香取慎吾さんという世代でしたが、堺正章さんの孫悟空も再放送で見ていました。今でいえばどなたが孫悟空をお勤めになるでしょうか、想像すると楽しいです。

 

第一部はとにかく全てが現実からかけ離れたド派手な世界であり、理屈の前にどっかんどっかんと視覚的刺激が飛び込んでくるおもしろい内容でした!異次元の世界です。色彩に溺れるような快感があり、興奮しました。歌舞伎が初めての方にもぜひにとおすすめしたいです!

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