本日25日は六月大歌舞伎の千穐楽でしたね!おめでとうございます!
「たまったもんじゃごんせんわい」
このすえひろも夜の部にまいりまして、「木の実・小金吾討死・すし屋」を拝見してまいりました。
今月のすし屋は仁左衛門さんの権太を中心に配役が素晴らしく、間違いなく現在見ることのできる歌舞伎の舞台の最高峰であっただろうと思います。
歌舞伎は同じ演目を何度も繰り返し上演しているように見えますが、同じ演目を同じ配役で見るというのは本当に難しいことで、今月にしかないめぐり合わせと思いますと、今日も一瞬一瞬を惜しむように味わいました。この素晴らしさを自分の目と耳にしっかりと残したく、今月何度も何度も繰り返し拝見しましたが、それでもまだ足りません。生涯記憶に残していたいです。
これまでに拝見した仁左衛門さんの役どころの中で、一番好きなのはやはりいがみの権太かもしれません。可愛く、どうしようもなく。関西地方のどこかに本当にいて、どうしようもないごろつきながらも家族を思って暮らしていそうな、そんな存在感ですね。
やっているのはギャンブルや軽犯罪、それなのに可愛くて、愛があるという。仁左衛門さんの義太夫狂言は、いつも人間の心のおもしろさに気づかせてくれます。こんなにおもしろいものがあっていいのかと思います。
セリフの一語一句はもちろん、表情や動きの一つ一つまで、本当に細部まで練り上げられていて。少し笑って仏様のようなお顔をしてこと切れる幕切れに、深い救いを感じました。権太の頬は涙で濡れていました。
芝居の全編にわたり、とにかく本当にいいなあ、悲しいなあと…もうそれしか言えない、言葉にできない時間です。とにかく生きていてよかったです。
今日の舞台では仁左衛門さんのほかに、錦之助さんの維盛と千之助さんの小金吾が印象深かったです。維盛から妻子への愛情、お里への気遣いを感じたのは、錦之助さんが初めてでした。この物語のみんながこの人のために運命を変えられてしまったということに納得するような。深い悲しみを背負うような維盛に見えました。
また千之助さんは初日の頃からぐいぐいとお芝居が変化していきましたね。今日など権太に二十両を渡すとき怒りで指まで震えていて、このお芝居の細かさ、気持ちの入り方はやはり仁左衛門さんのお孫さんだなあと唸らされました。素晴らしかったです。
そして孝太郎さんの若葉の内侍と壱太郎さんのお里との視線によるかすかなコミュニケーションも、しびれるものがありました。ほんのわずかな動きなのですが、互いの胸中を思いやる女性たちの姿が見えてきて。
映像にするときにはカットされてしまうような、生の舞台の本当に細かいやりとりを目撃すると、役を生きる役者さんたちの力に震えます。とにかく、良い時間でした…