来たる14日(日)は2月の歌舞伎座公演
十八世中村勘三郎十三回忌追善
猿若祭二月大歌舞伎のチケット一般発売日です!
冠してあるとおり、現在の勘九郎さん・七之助さんのお父さまにあたる十八代の勘三郎さんの十三回忌追善公演です。十三回忌という文言を目の当たりにしますと、ああ、そんなにも長い月日が経ってしまったのか…と途方に暮れるような思いがします。大切な唯一の命が失われても、芸が続いていくことの尊さ、続けていくことの厳しさを、客席からも感じさせられる年月でした。
歌舞伎座新開場以降に歌舞伎をお好きになられた方も大勢おいでのことと思いますので、勘三郎さんご健在の頃の舞台を生でご覧になっていない方の割合も増えているのではないでしょうか。それでもご子息方をはじめゆかりの方々のご活躍によって、在りし日の姿を想像して思いを馳せることができるのは、伝統芸能の豊かさのひとつではないかと思います。
つい湿っぽくなりましたが、十八代ゆかりの演目が揃った色とりどりの公演です。人気者揃いですので、チケットは早めの確保をおすすめいたします!
公演の詳細
一般発売日
1月14日(日)10:00~
会期・上演時間
2024年2月2日(金)~26日(月)
昼の部 11:00~
夜の部 16:30~
休演日:13日(火)、20日(火)
貸切:昼の部:9日(金)
チケット料金
一等席 18,000円
二等席 14,000円
3階A席 6,000円
3階B席 4,000円
1階桟敷席 20,000円
昨年の六月から、一部事前予約制の一幕見席が復活しています。3階席のチケットは早めに埋まってしまいますが、幕見席のおかげでお手頃に歌舞伎を見るチャンスが大きく広がりました!未体験の方はぜひお試しくださいませ。
おすすめのポイント
猿若祭二月大歌舞伎は十八代勘三郎十三回忌追善と冠した公演で、昼夜ともにゆかりの深い方々や演目が並んでいます。ご子息の勘九郎さん、七之助さんはテレビでもご活躍ですので、歌舞伎を一度見てみたいなあとお考えの方にはぜひにとおすすめしたく思います!素顔を知っている方がいるというだけでも、ぐっと歌舞伎の舞台が身近になり、内容が思い出に残りやすくなるためです。
今回初めてご覧になる方もおいでかと思いますので、各部の内容をごく簡単にご紹介いたします。演目選びのご参考になさってください。
昼の部は「新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)野崎村(のざきむら)」「釣女(つりおんな)」「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」というラインナップです。
「野崎村」は、純朴な田舎娘・お光と、商家のお嬢様・お染、そしてその商家の丁稚・久松の三角関係を描いたラブストーリーです。
都会の商家にて、お嬢様のお染と道ならぬ恋に落ち、田舎の実家へと戻された久松。そんな久松と結婚することになり、お光がウキウキと喜んでいるところへ、美しい都会のお嬢様であるお染が訪ねてきてしまう。果たしてどうなる…というお話です。
今回はお光を鶴松さん、久松を七之助さん、お染を児太郎さんがお勤めになります。お光のお父さん・久作がドラマのキーポイントとなるのですが、今回は彌十郎さんがお勤めになりますので、胸に染み入るようなドラマを見せてくださるはずです。
続く「釣女」は狂言を題材とした舞踊劇です。結婚相手が欲しい大名と太郎冠者が、神社で授けられた恋の釣り針によって女性を釣るのだが、釣り上げた二人の女性の容姿に大きな違いがあり…という内容です。近年の社会のありようにはそぐわないという意見もあるかもしれませんが、内容上で美しくないとされている女性を可愛らしく見せるというのも役者さんの芸の力ですので、ぜひ今後も拝見したいと私は思っています。
最後の「籠釣瓶花街酔醒」は、吉原で実際に起こった事件を題材としたスリリングなドラマです。花魁の八ツ橋に一目惚れをした田舎商人の佐野次郎左衛門は、八ッ橋に多額のお金を注ぎ込んで身請け話まで進めるのですが、間夫の繁山栄之丞との板挟みになった八ッ橋は、次郎左衛門に冷たい愛想尽かしをしてしまいます。数か月後、次郎左衛門が再び八ッ橋に会いに来て、果たしてどうなる…という内容です。人を狂わせる妖刀・籠釣瓶が物語のキーポイントになります。
今回は佐野次郎左衛門を勘九郎さん、八ッ橋を七之助さん、そしてなんと繁山栄之丞を仁左衛門さんがお勤めになります。平成22年に歌舞伎座で上演された勘三郎さんの佐野次郎左衛門、玉三郎さんの八ッ橋、仁左衛門さんの栄之丞での上演は絶品でした。シネマ歌舞伎になっていますので、機会がありましたらぜひこちらも併せてご覧ください。
夜の部は「猿若江戸の初櫓(さるわかえどのはつやぐら)」「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)すし屋」「連獅子(れんじし)」というラインナップです。
「猿若江戸の初櫓」は、江戸歌舞伎のはじまりを描く華やかな舞踊劇です。かぶきおどりで京のスターとなった出雲阿国と猿若が江戸へやってきて、興行の許可を得るという内容であります。中村勘三郎の初代が、京から江戸へやってきて中村座を興した猿若勘三郎であるということにちなんだゆかりの深い演目です。今回は猿若を勘太郎さん、阿国を七之助さんがお勤めになります。
続く「すし屋」は、義太夫狂言と呼ばれるジャンルの三大名作として知られる義経千本桜の名場面です。義経千本桜は、壇之浦で滅んだはずの平家の武将たちが実は生きていて、逃避行を続ける義経の命を狙って潜伏している…という設定で展開する物語であります。すし屋の場面では、村のおすし屋さんが一生懸命に平維盛をかくまわっているところへ、ドラ息子・いがみの権太が帰ってきてひと悶着起こす…という家庭の悲劇が描かれます。果たしておすし屋一家は維盛は守り抜けるのか、トラブルを起こすいがみの権太の真意はいかに、というのがキーポイントです。今回はいがみの権太を芝翫さんがお勤めになります。
最後の「連獅子」は、歌舞伎といえば多くの方がイメージする名作舞踊です。白と赤の長い毛をぶんぶんと振り回すあの舞踊であります。獅子の伝説をもとに親子の情愛を描く舞踊で、親子共演での上演が非常に多い演目でもあります。
勘三郎さんと勘九郎さん、七之助さんの連獅子は大変有名で、テレビのドキュメンタリー番組などでも度々放映されていますので、ご覧になったことのある方も多いのではないでしょうか。今回は親獅子を勘九郎さん、仔獅子をご次男の長三郎さんがお勤めになりますので、感動必至の上演です。今後も何度も親子で連獅子をお勤めになると思いますが、当然ながら今のご年齢での上演は今しかありません。ぜひにとおすすめいたします。
初めての方にはどちらの部もおすすめです!どちらの部でも楽しめると思います。強いて言うならば、ドラマ性の強い物語がお好きでセリフもきちんと聞き取って楽しみたい方には昼の部を。美しく華やかで歌舞伎らしさ満点な舞踊を楽しみたい方やドキュメンタリー番組がお好きな方には夜の部をオススメいたします。