歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。 歌舞伎歴10年の20代。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい寺子屋 その4 あらすじ&名文「いろは送り」を読んでみましょう

歌舞伎座で上演中の十二月大歌舞伎

第二部の「寺子屋」についていろいろとお話してきましたが、今日はいよいよあらすじをお話をしたいと思います。

ネタバレはいやだなぁとお考えの方には抵抗があるかと思いますが、歌舞伎はネタバレありきのようなところがありますからお手柔らかにお願いいたします(人'v`*)

一言で言うと

『菅丞相の一子・菅秀才の命を守るために松王丸が自分の子どもを身代わりにするお話』

です。゚゚(´□`。)°゚。

松王丸については前回お話していますので、ぜひご一読くださいませ。

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悪の時平といろいろとあり、太宰府へ流罪になってしまった善の菅丞相

”菅丞相の血を絶やすため、菅丞相の一子・菅秀才の首を取れ!”という時平からの命が出ましたが、家来たちは菅秀才がどんな子供か誰も知りません。

そんな秀才の顔を唯一知っているのが、縁起の良い三つ子の一人として菅丞相から大切にされた松王丸でした。

松王丸梅王丸といがみ合いながらも、本当は恩人の菅丞相に仕えたいと思っています。

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自分だって、大切な我が子を犠牲にしてでも流罪になってしまった菅丞相さまのお役に立ちたいんだという強い思いを秘めた人物なのです。

舞台は寺子屋

物語の舞台は武部源蔵(たけべげんぞう)という男と、その妻・戸浪(となみ)が営む寺子屋です。

この源蔵はかつて菅丞相の弟子として仕えていましたが、戸浪との社内恋愛で菅丞相から勘当を受けてしまったという過去があります。当時、職場での恋愛はタブーでした。

しかし、主従の縁は前世・現世・来世にわたるほどに深いものだと考えてられていた時代。やはり大切なのは菅丞相です。

源蔵は狙われている菅秀才を、自分の寺子屋で大切にかくまっていたのでした。。

 

しかしそんなことは既にばれていて、"秀才の首を討て"とついに命令されてしまったのです(・_・;)

あぁどうしよう、どうしよう・・・と悩みながら帰ってくる源蔵

「せまじきものは宮仕えじゃなぁ」というセリフが大変有名です。

 

源蔵が鬱々と寺子屋に帰ってくると、どこの子なのかなにやら高貴な顔立ちの新入りの生徒が入っていましたΣ('0'o)

源蔵が帰ってくる前に母親に連れられてきたという、小さな男の子。

親には申し訳ない・・・と悩む源蔵でしたが、源蔵夫婦には身代わりにできる子がありません。

"この子の首を取って菅秀才として差し出すしかない"と決意します(・_・;)

肝心の菅秀才は丁重に奥へとかくまい、覚悟を決める源蔵夫婦でした。

 

とそこへ、いよいよ時平方のさむらい達がぞろぞろと寺子屋へやってきます。

菅秀才の首を差し出せ!となにやら偉そうな威圧的な雰囲気でいうのです。時は迫ります。

菅秀才の顔を見極める首実検のためにやってきたのは松王丸。なんだかゲホゲホと具合が悪そうなようすですが、この仕事ができるのは松王丸しかいません。

 

いよいよ逃れられぬ源蔵…

裏へ行き、えーい!と声をあげて身代わりの子の首を取ります。

具合の悪い松王丸は首実検のためによたよたと所定の位置に向かいますがふらりとよろめき、戸浪にぶつかってしまいました。

するといきなり「無礼者めェェッッ!!」と怒鳴りますΣ(・□・;)

そんなに怒らなくても良いのに…と思ってしまいますが、この松王丸の胸のうちは後で感じ取ることができます。ここの部分の見得も見どころのひとつです。

 

源蔵が持ってきた首桶を前に、ついに松王丸による首実検が始まります。

お話の全てを知ってからこの部分の仕草・表情を見るとなんとも言えぬ思いで胸がいっぱいになるのです…。゚゚(´□`。)°゚。

首をじっと見つめた松王丸「菅秀才の首に相違ない、相違ござらぬ、でかした、源蔵よく討った」と宣言。

源蔵夫婦は無事、菅秀才を守ることができ安堵します。

 

ホッとしたのも束の間…

先ほど身代わりに首を取ったばかりの、新入りの生徒のお母さんが息子を迎えにきてしまいましたΣ(・□・;)

 

"いっそお母さんも殺すしかない…"

源蔵、斬りかかると

お母さんは「息子はお役に立ちましたか?」と尋ねるではありませんか(・_・;)

 

はて・・・?というところへ、歌のついた松の枝を投げ込み再び現れた松王丸

なんとこの母・千代さんは、松王丸の妻だったのです。

松王丸夫婦菅秀才の命を守るために、大切な可愛い一人息子・小太郎くんをこの寺子屋に送り込んだのでした…!

二人は全てを承知で白装束をつけ、小太郎君を弔いにやってきたのです。

 

現代的な倫理観では理解しにくいこの行動は、先ほど主従は三世と申し上げたように忠義のこころのあらわれであります。

兄弟や世の中みんなが菅丞相に同情している中で、丞相への深い忠義を持ちながら時平に仕えていた松王丸は、これまでどんな気持ちでいたのでしょうか。

菅原伝授手習鑑のクライマックスでようやく松王丸の本当の思いが表れるのですね。

 

もちろん子を失った父親として夫としてのつらい思い、夫婦の悲しみも強く持っている松王丸ですが、小太郎君は菅丞相様のお役に立って死ぬことができたわけです。

それも嫌がりもせず立派に死んでくれた小太郎君を、誇らしく思う松王丸です。

自分がこうして恩に報いることができた一方で、ただ自害することになってしまった桜丸は、どんなにか無念だろう・・・と思う松王丸「桜丸が不憫でござる」という言葉は、胸をしめつけるような味わいをもっています…

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そして松王丸は行方のわからなかったお母さん菅秀才を再会させてあげ、自分にできうるかぎりの丞相様の役に立つことをやり遂げることができました。

亡くなった小太郎君のためにみんなで野辺送りと呼ばれるお葬式の儀式をし、この「寺子屋」は幕となります。

いろは送り

クライマックスである、小太郎の遺体を送る場面には「いろは送り」と呼ばれる義太夫の名文が語られます。

いきなり聞き取るのは難しいかと思いますので、ぜひ一度この文をお読みになってみてください(人'v`*)

 いろは書く子をあへなくも、散りぬる命、是非もなや。明日の夜誰れか添乳(そえぢ)せん。らむ憂ゐ目見る親心、剣(つるぎ)と死出のやまけ越え、あさき夢見し心地して、あとは門火に酔ひもせず、京は故郷と立別れ、鳥辺野指して連れ帰る

菅原伝授手習鑑 床本

いろはうたに弔いの言葉を織り交ぜながら、子を失う悲しみを描き出すこの一節、日本語はなんて美しい言語なのだろうと思わずにはいられません。

 

「いーろーはー」というところはとても聞き取りやすいはずですから、おっ!ここだな!と思っていただけるのではないかなと思います。

このいろは送りは劇場中の歌舞伎ファンの方々が楽しみにしているはずですので、どうぞお静かに名文に耳を澄ましてお聞きくださいね(n´v`n)

おわりに

寺子屋にはとりわけ思い入れがあるためかなり長くなってしまいましたが、私のつたないお話で流れを掴んでいただけたでしょうか(ノv`*)

近年の上演回数も多いので、一幕見席を活用しいろいろな配役で繰り返しご覧になってみてくださいね。

繰り返して見ることで義太夫の詞章も次第に聞き取りやすくなってゆくはずです(´▽`)

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歌舞伎座での一幕見はこちらのタイムテーブルをご参照ください!

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