ただいま歌舞伎座にて上演中の芸術祭十月大歌舞伎から、夜の部「熊谷陣屋(くまがいじんや)」のお話を少しだけしたいと思います!
歌舞伎の代表的な作品ですので、ご覧になったことのない方もこの名前をおぼえていただけたら嬉しいです。
前回は「熊谷陣屋」が「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」という長い物語の中の一場面であるということをお話しましたね。
実はこの「一谷嫩軍記」には物語の中で大変重要な意味を持つキーワードがあるのです…
今日はそのキーワードを含めた、物語全体の前提についてお話したいと思います。
「一枝を剪らば一指を切るべし」
主人公は源義経を主君に持つ熊谷次郎直実(くまがいじろうなおざね)という男です。
平家との一谷の合戦に向かう前に、堀川御所に訪ねて義経と対面しました。
そこで義経は、
弁慶が書いたという
「一枝を剪らば一指を切るべし」という制札を
直実の陣屋の桜の木の側に立てなさい、と命じるのです。
桜の枝を切るものは指を切られてしまうという厳しい制札ですが 、
実はこの言葉には別のメッセージが込められているんです。
とても重要なキーワードですので、ぜひ覚えてくださいね。
文楽版の制札
先日先輩にいただいたご縁で文楽「一谷嫩軍記」の舞台裏に入れていただいた際にも、
この「一枝を剪らば一指を切るべし」のミニ制札がありました。
これはまさに「熊谷陣屋」の象徴ともいえるものですので、このすえひろも内心どうにかなりそうなほど興奮しましたが、周りの方のご迷惑になってはいけないと押し殺しました。
歌舞伎の舞台にももちろんありますので、ぜひご覧ください!